マンション

「結局私のマンションはいくら?」──フルリノベにかかる費用の現実

「70㎡のフルリノベって、800万円?1,200万円?それとももっと?」
「解体後の追加とか、諸経費がどれくらい乗るのかが一番怖い…」
「ネットの相場を見ても“全部込み”の金額が結局わからない」

マンションのフルリノベを検討する人にとって、最初の悩みは“総額の不透明さ”です。キッチンや床材の価格は調べれば出てきますが、それは全体費用の一部に過ぎません。本当に知りたいのは、解体・設備・申請・諸経費・仮住まい・引越し・予備費まで含めた最終金額です。

しかし現実のネット情報は、

  • ㎡単価だけを並べた薄い相場記事
  • 「○○万円〜」と下限だけを強調した不親切な広告
  • 管理規約・配管・遮音・上振れ要因の説明なし

こういった情報がほとんどで、読み終えても判断できる材料が揃いません。

そこで本記事では、最もニーズが強い疑問にお答えします。

■ 結論:マンションのフルリノベ費用は「面積 × グレード × 制約 × 変更量」で決まる

特に費用に影響を与えるのは次の4点です。

費用を左右する主要要素内容
1.専有面積㎡が増えるほど工事範囲が増える
2.グレード標準設備か、デザイン性・質感まで追求するか
3.マンション特有の制約配管方式・遮音・管理規約など
4.変更量と難易度水回り移動・間取り変更・造作の有無

逆に言えば、この4つが分かれば費用のブレは読み解けるようになります。

ここからは、読者が最も知りたいポイントである
「50㎡/65㎡/70㎡で結局いくら?」
を3つのよくあるモデルケースで整理します。

■ 3つのモデル別 費用シミュレーション

専有面積範囲イメージ一般相場(フルリノベ)ハイグレード(自然素材・造作前提)
50㎡1〜2人暮らし/間取り変更少なめ600〜950万円1,000〜2,000万円
65㎡2〜3人暮らし/動線改善あり850〜1,250万円2,000〜3,000万円
70㎡ファミリー層/間取り変更+造作あり950〜1,350万円2,500〜3,500万円

*一般的なネット上で見かける「800万〜1600万円」は、間取り変更を伴わない“部分リノベ”“設備交換中心”の価格帯です。一方で、構造体を残してすべて解体する「フルスケルトン」+自然素材・造作家具・断熱補強まで含めたリノベーションの場合、70㎡で 2,500万〜3,500万円 が現実的です。

なぜ同じ面積でも300〜700万円差が出るのか?

差が出る理由は、この3つに集約できます。

差が生まれる要因具体例差の目安
水回りを動かすかキッチン移設・回遊動線+50〜200万円
床と断熱の仕様にするか遮音・二重床・断熱工事+40〜180万円
造作家具の量洗面台・壁面収納・TVボード+20〜200万円

👉 暮らしの理想をどこまで叶えるかで費用は大きく変わる
👉 同時に、マンション特有の構造制約によって難易度も変わる

QOL(生活の質)はなるべく下げたくないから、妥協はしたくない!という理由などの理想があればハイグレードを選んでも後悔はしないでしょう。

■ 上振れリスクを事前回避するためのチェックリスト(10項目)

次のうち「3つ以上当てはまる場合」、費用が予定より上振れする可能性が高いマンションです。

1.築年数が30年以上
2.給排水管が鉄管(錆びやすい)
3.直床(防音の等級が厳しいタイプ)
4.結露が発生している
5.床がふわつく・沈む箇所がある
6.天井高が低い(配管や換気に制約が出やすい)
7.管理規約が厳しい(申請書類が多い)
8.上階や隣戸の生活音が気になる
9.既存間取りの動線が悪い
10.キッチン・浴室を大きく移動したい

ポイント

  • ①②⑤は「見えない劣化」で追加工事のリスク
  • ③④⑧は「遮音・断熱費」が増える可能性
  • ⑩は「排水勾配の確保」が最大の制約

つまり上振れは偶然ではなく、事前に読み取れるサインが必ずあります。

マンションフルリノベの自由度と制約 ──「どこまでできる?制約が費用に関わる?」

「フルリノベって、配管交換や断熱まで含むの?」
「管理規約があるから“自由にできない”って聞いたけど、実際どこまで可能なの?」

多くの方が抱く次の2つの不安──
①どこまで自由に変えられるのか分からない②制約が費用にどう関係するのか分からない
ここでは、それらの不安にお答えします。

結論から言うと、フルリノベは自由度が高い工事ですが、マンションには変えていい場所と、触れない場所が明確に存在します。これを理解しないと、理想と現実のギャップが後で大きくなり、「そんなはずじゃなかった」と後悔する原因になります。

この章では次の内容を軸に整理していきます。

■ そもそも“フルリノベ”とは?(フルリフォームとの違い)

項目フルリフォームフルリノベーション
目的今を直す暮らしを再設計する
範囲表層中心(床・壁・設備の更新)配管・断熱・動線・間取りまで踏み込む
価値「古さの改善」「暮らしのアップデート」
費用中〜高(自由度に比例)

フルリフォームは主に表面上の見た目を中心に、フルリノベは、暮らしそのものを設計し直す工事だと認識されると分かりやすいでしょう。

そのため、断熱・遮音・動線・収納・素材・家事時間の短縮など、暮らしの質と直結する領域に踏み込むのが前提なのでより慎重に検討する必要があります。

■ フルリノベが必要になるケース(自己判断チェック)

次のチェック項目のうち2つ以上当てはまる場合は、部分リフォームではなくフルリノベ向きです。

1.家のストレスが日常化している
⇒動線が悪い・収納不足・暗い etc.

2.築20年以上になる
⇒配管や断熱が劣化している可能性がある

3.子育てが始まる・老後が始まるなどライフステージの変化が訪れようとしている

⇒間取りが今の生活に合っていない

4.冬寒い/夏暑いと感じている

⇒断熱性能が低く、光熱費も増える

5.隣や上の階の生活音が気になる

⇒防音性能が弱い可能性

6.将来売る可能性がある

⇒表層だけでは資産価値が維持しづらい

多くの人が「見た目が気になったから」という理由で検討し始めますが、実際にフルリノベで手に入る価値の本質は

“毎日のストレスが消え、暮らしの質が20年以上底上げされること”

ここを理解すると、判断がブレなくなります。

■ どこまで変えられる? ── 自由度の全体像

項目できる?できない?補足
間取り変更多くのケースで可能ただし構造壁は不可
配管交換可能PS位置と勾配に影響される
キッチン移動可(距離による)勾配確保できないと制約
断熱強化可能内側施工で対応
床暖房可能床構造による
サッシ交換基本不可共有部のため
床材の種類選択条件付きで可遮音等級(LL-45など)必須

👉 “専有部(自分の持ち分の範囲)は自由、共有部は制約あり”と考えてください。

■ 間取り変更できるか一発で分かるガイド(最も多い要望)

間取り変更、とくに「キッチンを動かしたい」「トイレの位置を変えたい」という希望は多いのですが、マンションでは “水回りを動かせるかどうか”が自由度のカギ になります。ポイントだけ押さえれば、専門的な図面が読めなくても判断の目安が持てます。

■ まず最初に考えるべきこと

Q1:キッチンやトイレなど“水回り”の場所も動かしたいですか?

  • YES次のQ2へ
  • NO水回りを動かさないなら、間取り変更の自由度はかなり高いです(リビング拡張・個室変更などはOKなことが多い)

■ 水回りを動かしたい場合の判断軸

Q2:床の中に“排水の傾き(排水勾配)”を作る余裕がありそうか?

ここだけ少し専門っぽいですが、実は考え方はシンプルです。

◎ なぜ排水の傾きが必要なの?

水は真横に流れません。
ほんの少し 坂道(傾き) が必要で、この坂道を 床の中に作れるかどうか で移動の可否が決まります。

傾きを作れる →移動OK(希望の間取りにしやすい)
傾きを作れない →床を少し上げればOKな場合がある
それでも無理 →水回りの移動は制限あり

つまり、

床の中に“水が流れる通路”をつくれるかどうか?

これが間取り変更できるかどうかを決める最大のポイントです。

制約があると費用はどう変わるのか?

フルリノベは「自由度が上がるほど理想に近づく一方、制約があるほど追加費用が発生しやすい」という特徴があります。では、なぜ制約があると費用に跳ね返るのでしょうか。

結論から言うと、制約は “工事の難易度” を上げ、難易度が上がると “工程が増え、人件費・材料費が増える” からです。

少し噛み砕くと、費用が増える仕組みは次の3パターンに分類できます。

制約の種類起きることなぜ費用が上がる?
1.物理的制約(床下の高さ・配管ルートなど)迂回施工・床上げなど特別な工事が必要標準施工では対応できず、手間が増えるため
2.規約による制約(遮音・設備レベルの制限)指定グレードの材料や工法に変更材料単価が上がる&選択肢が狭まり割高になるため
3.築古による制約(下地・配管の劣化など)想定外の補修や交換が発生解体後に“足し算の工事”が増えるため

■ 例えるなら「道路工事」と同じ

  • 制約がない道路 → まっすぐ舗装できて安くて早い
  • 制約がある道路 → 迂回したり補強したりするため工期が伸びる

マンションリノベもこれと同じで、

制約=追加の作業が必要なサイン → その分コストが積み上がる

という構造です。

■ 具体的にどれくらい差が出るのか?

制約の影響例追加されやすい内容上振れ目安
水回りを遠くに動かしたい床上げ/配管延長+20〜60万円
遮音等級の指定が厳しい高遮音フローリング採用+15〜40万円
下地や配管が劣化補修・交換+10〜80万円
直床→二重床に変更床を作り直す工事+25〜70万円

→ つまり、制約が多いほど「同じ70㎡でも数十万円〜200万円」の差になる場合があるというのが実態です。

■ マンション特有の失敗リスク3つ(回避策付き)

リスクよくある失敗例回避策
床(遮音)無垢床を直貼りして規約違反遮音等級クリアが大前提
水回り勾配確保できず計画崩壊事前の現地調査と配管ルート確認
音問題防音対策せずトラブル二重床や遮音マットを前提に計画

👉 フルリノベは“理想を叶える工事”だが、マンションは自由と制約が共存している
ここを理解せずに進めると失敗します。

■ 迷ったら相談すべきタイミング

特に以下に該当している人は、自力判断よりプロ判断が合理的です。

  • “できる/できない”の線引きが判断できない
  • 図面を見てもピンとこない
  • 管理規約の読み方が分からない

そういった場合は、無理に抱え込まず、こちらから相談を推奨します。

👉 あすなろ建築工房に分からないことを相談する

マンションリノベは何から始め、どこで比較し、どんな会社を選べば失敗しないのか?

「進め方が分からないまま業者と話すのが怖い…」
「どの会社も“できます”と言うけれど、何を基準に選べば良いの?」

フルリノベで後悔した方の多くは、“比較の仕方”と“進め方”を知らないまま契約したことに原因があります。

この章では、

を整理し、あなたの不安を「見通しのある状態」に変えていきます。

フルリフォームとフルリノベの大きな違い(進め方の本質)

まず押さえるべきは進め方の思想です。

項目フルリフォームフルリノベーション
ゴール老朽改善・表層改善が中心暮らしの再設計(根本改善)
目線現状ベース理想ベース
会話の中心設備・内装の選定暮らし・動線・温熱・収納・将来設計
追加の出やすさ低い中〜高(内容が広いため)
期間比較的短い長め(検討に時間が必要)

つまり、「比較は値段ではなく思想から」始めないと失敗しやすいということです。

マンション・フルリノベ完了までの7ステップ

フルリノベもフルリフォーム同様「全体の流れを理解してから動く」ことで失敗を大きく減らせます。
ここでは、最初の整理から引渡しまでを 7つのステップ に分けて、つまずきやすいポイントと回避策を合わせて解説します。

STEP1|暮らしの棚卸し・優先順位の整理(比較準備)
目的: 会社選びを始める前に“自分たちの物差し”を作る
つまずきポイント: 設備やデザインの比較から入り、判断軸がブレる

回避策:
「暮らし>デザイン>予算」のように優先順位を言語化
家族で“やりたいこと”と“やらなくていいこと”を切り分ける
STEP2|現地調査・ヒアリング(制約の把握)
目的: マンション特有の制約を最初に把握する
つまずきポイント: 排水勾配・共有部・断熱・遮音の制約を知らずに希望のまま進めてしまう

回避策:
早い段階でプロに現地調査を依頼
配管位置・下地状態の確認は最優先で実施
STEP3|基本設計・間取りプランの確定
目的: 理想の暮らしを図面に落とし込むフェーズ
つまずきポイント: 選択肢が多く、時間だけ過ぎていく / 判断疲れ

回避策:
「絶対に叶えたいことは3つまで」と決めて進める
可変性(将来の暮らし変化)も前提にしてプランを決める
STEP4|見積比較・金額調整(最初の山場)
目的: 現実と理想のバランスを取る作業
つまずきポイント: 総額だけを見て会社を比べてしまう

回避策:
㎡単価ではなく内訳の透明性で比較
「解体後の調整ルール」を契約前に取り決める
STEP5|管理組合への申請(最初の詰まりポイント)
目的: 工事を正式にスタートさせるための手続き
つまずきポイント: 書類不備や規約との不整合による差し戻し

回避策:
過去の施工実績がある会社を選ぶと圧倒的に有利
申請前に「規約の読み合わせ」を施工会社と行う
STEP6|解体〜本工事(最大の詰まりポイント)
目的: 現場が動き出し、リノベが形になるフェーズ
つまずきポイント: 解体後の“想定外”による追加費用

回避策:
事前調査+解体後の再確認ミーティングを必ず挟む
仕様変更は極力この段階以降に持ち込まない
STEP7|完成・引渡し(最終チェック)
目的: 品質を見極め、安心して暮らし始める準備
つまずきポイント: チェック漏れによる“住み始めてからの後悔”

回避策:
チェックリスト形式で引渡し確認
造作家具や建具は「触りながらチェック」が鉄則

このロードマップを理解しておくだけで、見通しは一気にクリアになります。

よくある質問(FAQ)

管理規約が厳しいマンションですが大丈夫ですか?

対応は可能です。大切なのは「経験と事例」。同マンションの施工実績がある会社は進行が早く、安全に進められます。

追加費用はどこで発生しますか?

8割は「解体直後」。配管・下地の劣化が原因です。事前調査とルール化でリスクは下げられます。

どこまで自由に間取り変更できますか?

スラブや排水経路次第です。床下が取れるかどうかが分岐点であり、ここを見抜ける会社を選ぶことが重要です。

会社選びの判断軸(ここが一番重要)

マンションリノベで失敗する人は、会社選びで次の比較をしていません。

比較すべきは“値段”ではなく“前提条件”です。

比較軸悪い比較良い比較
見積総額だけ見る内訳・数量・含まれる範囲を見る
設計力パースの雰囲気で判断動線の合理性・収納計画で判断
施工力職人任せ現場監督の管理体制まで確認

ここまで理解しておけば、相見積もりも怖くありません。

失敗しない会社の見極め方3選

マンションのフルリノベは、「誰に頼むか」で満足度の8割が決まると言っても過言ではありません。

なぜなら、戸建て以上に制約が多いからです。排水勾配、遮音等級、管理規約、共有部の扱い…。この“マンション特有の壁”を理解していない会社に依頼すると、追加費用・工期遅延・希望が通らない、といったトラブルが起きやすくなります。

そこでまず押さえるべき判断軸は次の3つです。


判断軸1:設計力 × 現場力がセットであること

✔「プランは素敵だったのに、できませんと言われた」
✔「言っていた仕上がりと全然違う」
——これは設計と施工が分断されている会社で起きる典型トラブル

  • 設計と施工が別会社 → 認識ズレが起きる
  • 設計事務所だけ → デザインは良いが現場対応に弱い
  • 工務店だけ → 施工は強いが設計提案が弱い

マンションリノベは「設計と現場が両方強い会社」が最適解です。


判断軸2:マンション施工の実績量

マンションは戸建てと違う技術が多いため、「件数」が1つの安心材料になります。

(確認すべき具体項目)

  • 同規模(㎡数)の実例があるか
  • 築古(築20年以上)の施工経験があるか
  • 間取り変更の実績があるか
  • “同じマンション”の経験があればベスト

実績の確認方法

→「施工事例を見せてください」「管理規約の制約で対応した事例はありますか?」と聞くと技量が浮き彫りになります。

判断軸3:見積の透明性(上振れリスクの扱い方)

見積は「安さ」ではなく、“曖昧さが少ない会社”ほど信用できます。

比較する際は以下を必ず確認してください。

チェック項目良い見積悪い見積
内訳数量が明記・根拠がある一式表記だらけ
設備型番・グレードが明確仕様が曖昧
諸経費根拠が書かれている%のみ
上振れ時ルールが契約書で明文化都度見積でトラブル化

リノベで揉める原因の7割は「曖昧な見積と想定外の追加」です。
だからこそ、見積の透明性=安心の指標 と言えます。

よくある質問(FAQ:続き)

住みながら工事できますか?

マンションのフルリノベは基本的に“不可”。粉塵・騒音・床撤去・配管更新の都合上、仮住まいは必須です。

相見積もりはすべきですか?

するべきです。ただし“値段比べ”ではなく、“比較項目を統一した比較”をしてください。比較ルールが曖昧だと判断を誤ります。

いくらから相談できますか?

図面があれば精度の高い概算、図面がなくてもヒアリングで目安を出せます。初回段階でお金はかかりません。

まとめ

フルリノベは不安が多いですが、正しい知識と進め方を理解していれば、失敗は防げます。この記事のポイントを整理すると、

  • 費用は長く快適に暮らすことを考えてフルリノベしたいなら最低でも2,500〜3,500万円が現実的
  • 配管・断熱・遮音は“できる/できない”の見極めが重要
  • 比較は金額ではなく「前提条件」と「設計×施工体制」

この3つさえ外さなければ、あなたの理想の暮らしは十分実現できます。

あすなろ建築工房では、設計と施工が一体となり、
造作や自然素材といった「長く心地よく暮らし続けるための見えない部分」にも
力を入れているため、フルリノベ費用は2,500〜3,500万円あたりの価格帯を目安としています。

もし今こんな状態なら、私たちが力になれます

「うちのマンションで間取り変更がどこまで可能か知りたい」
「上振れしない見積の考え方を知りたい」
「まずは予算と優先順位の整理から始めたい」

あすなろスタッフ

あすなろ建築工房では、図面があれば無料で“できる/できない診断+概算” を作成できます。焦って会社を決める必要はありません。まずは状況を整理しましょう。

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