角地は本当にデメリットはないのか?
家づくりにおいて「角地」は人気の条件のひとつとされがちです。「日当たりがいい」「開放感がある」といったイメージから、角地を第一候補にされる方も少なくありません。
しかし実際には、角地ならではの“住んでから気づく”落とし穴やリスクも存在します。
この記事では、横浜市を拠点に多くの家づくりを手がけてきた私たちが、角地のデメリットを3つに絞って丁寧に解説。そのうえで、後悔しないための判断材料や「角地に向いている人」の特徴までお伝えしていきます。
これから土地探しを始める方や、角地を検討中の方にとって、きっと判断のヒントになるはずです。
角地のデメリット1.外からの視線が気になる?角地ならではのプライバシー問題

角地は日当たりや風通しの良さが魅力ですが、外からの視線が入りやすいというデメリットもあります。とくに、道路に2面以上接している角地では、通行人や車から家の中が見えやすくなるため、プライバシーの確保に工夫が必要です。
ここでは、角地が抱える視線の問題について、具体的なケースやリスクを紹介しながら、どのような方にとっては気になりにくいのか、またどんな設計の工夫で対策できるのかについて詳しく解説します。
なぜ角地は外からの視線が入りやすいのか
角地は、2方向以上が道路に接しているため、周囲からの視線が入りやすい構造になっています。とくに以下のようなケースでは注意が必要です。
- 通勤・通学路になっているため、朝夕の人通りが多い
- 信号や交差点に近く、立ち止まって待つ人が生まれやすい場所
- 隣家が少なく、建物同士の距離が広いため、視線が遮られにくい
いずれも、「日常的に視線を感じる暮らし」になりやすい要素です。
とくに小さなお子さんがいる家庭や、リビングやダイニングを道路側に配置した間取りの場合、外からの目が気になってストレスを感じることも少なくありません。
角地にはどんなリスクがあるのか?
視線が入りやすいということは、生活の様子や家族構成、日中の在宅状況が外部から想像しやすくなるということでもあります。
- 室内の様子が透けて見えることで、防犯リスクが上がる
- 道路から丸見えの庭やウッドデッキが、落ち着いて過ごしにくい空間になる
- 子どもが遊ぶ姿や洗濯物など、プライバシーへの配慮が必要になる
中でも、「自分は気にならなくても、家族がストレスを感じていた」という声は、意外と多く聞かれます。
それでもなお、角地を選ぶ価値とは?
もちろん、角地の開放感や明るさには確かな魅力があります。視線の問題についても、設計段階から対策を施すことで、十分なプライバシー確保は可能です。
- 窓の配置を道路側ではなく、内側や中庭側に寄せる
- 塀や植栽で視線を遮るデザインを取り入れる
- 人通りのある環境を「防犯性が高い」と前向きに捉えることもできる
実際に「角地でも視線が気にならないよう設計してもらえた」と語る住まい手の声もあります。
角地のプライバシー問題は、「設計次第」で不安を大きく軽減できるポイントです。
角地のデメリット2.外構費用や固定資産税が高くなる可能性も?

角地は道路に接する面積が広いため、外構にかかる工事範囲も自然と増える傾向があります。その分、フェンスや門柱、植栽といった外構工事の費用が高くなる可能性があるのです。さらに、角地は利便性が高いと評価されやすく、土地の評価額が上がることで固定資産税が中地よりも高くなるケースもあります。
ここでは、一般的な土地と比べたときの費用差や、角地特有のコストアップの理由、そしてなるべく費用を抑えるための工夫について詳しく解説していきます。
一般的な土地と角地の費用を比較してみると
一般的な整形地(約80〜120万円)
整形地とは、正方形や長方形に近い四角形の土地で、間口(正面)と奥行きがバランスよく取れた形状です。フェンスや門柱の設置面が少なく、資材も無駄なく使えるため、施工コストを抑えやすいのが特徴です。建物の配置もしやすいため、外構との連携設計もスムーズです。
狭小地(約60〜100万円)
狭小地は、土地面積が20〜30坪以下といったコンパクトな土地を指します。面積が小さいため、塀や舗装、植栽にかける範囲も限られ、費用は比較的安価で済みます。ただし、敷地内の施工スペースが狭く、職人の作業効率が下がる場合は人工費が高くなることもあります。
台形地・変形地(約100〜150万円)
台形地や三角形などの不整形地は、施工の難易度が高まるため、費用が上がる傾向にあります。フェンスやブロックの設置において、直角でない部分に合わせてカットや加工が必要になり、手間と資材ロスが発生するためです。さらに、デザイン性も求められると、よりコストがかかります。
崖地(約150〜300万円以上)
崖地は高低差のある土地で、擁壁(ようへき)や階段、手すりの設置など、安全対策が必須の外構工事が求められます。特に傾斜地では重機が入れないケースも多く、手作業による施工が中心になるため人工費が高額になりがちです。また、土留めや排水計画も必要なため、設計段階から外構予算を多めに見積もる必要があります。
敷地の状況により、外構費用に差が出ることが想定されます。
角地(約120〜180万円)
角地は道路に2面以上接しているため、設置が必要なフェンスや門柱、植栽の面積が増える傾向にあります。また、2方向からの見た目を意識した外構デザインが求められるため、材料費・人工費がともにかさみやすくなります。加えて、視線対策として目隠しフェンスやルーバー、植栽を多用するケースが多く、その分コストが上昇します。
外構費用が高くなる理由
角地では、2方向以上にフェンス・門柱・照明・植栽などを配置するケースが多くなります。道路から見える面が2面にできることで、デザインや素材の統一感も求められ、施工コストが上がる傾向にあるのです。
また、通行人の視線を遮るために、目隠しフェンスや植栽を多用する必要が出る点も費用を押し上げる要因となります。
固定資産税も高くなるの?
土地や建物の評価額は、「路線価(ろせんか)」と呼ばれる地域の価格基準に影響されます。角地は接道面積が多く、「土地の利便性が高い」と判断されやすいため、評価額が上がりやすいのです。
その結果、固定資産税や都市計画税が、同じ広さの中地よりも高くなる可能性があることは知っておくべきポイントです。
それでも費用を抑えるためには?
角地でも外構費用や税金を抑える方法はいくつかあります。
家づくりの段階で設計士と「どこにお金をかけ、どこを抑えるか」をすり合わせておくことが大切です。
角地のデメリット3.日当たりは良くても、風当たりが強い?

角地のメリットとしてよく挙げられるのが、建物の複数面から日光を取り入れられる優れた日当たりです。ところがその一方で、風通しが良すぎるがゆえのデメリットが見落とされがちです。とくに季節風や台風の影響を強く受けやすい立地では、洗濯物が飛ばされやすい・植栽やエクステリアが傷みやすいなど、日常生活に支障をきたすケースもあります。
この章では、「日当たりの良さ」と「風当たりの強さ」の関係や、立地による向き不向き、風を和らげる設計の工夫などを具体的にご紹介していきます。
日当たりと風当たりの良しあし
立地条件 | 日当たり | 風当たり | 特徴とリスク例 |
---|---|---|---|
南向きの中地 | 良い | 弱い | 安定した環境だが、隣家の影響を受ける |
北向きの中地 | 悪い | 弱い | 日中でも暗く、結露や湿気のリスクが高い |
南東の角地 | 非常に良い | 強い | 明るいが風の吹き抜けが強く、洗濯物が飛ばされやすい |
北西の角地 | 普通 | 強い | 冬は冷たい風が直撃。エアコンの効率にも影響が出ることも |
日当たりと風当たりは、暮らしの快適さを左右する大切な要素です。ただし、「明るければ良い」「風通しが良ければ快適」と一概に言えるわけではありません。住まう人のライフスタイルや健康状態、価値観によって、「ちょうどいいバランス」は異なります。
南東の角地(明るく風通しも良い)
- 朝から日差しが入り、洗濯や植物の管理に向いています
- 一方で風通しが非常に良いため、強風や台風時に備えた対策(ルーバーや囲いなど)が必要
- 明るく開放的な空間を求める共働き・子育て世帯には特に好まれる立地
北西の角地(西日や冬の冷風に注意)
- 日中は暗くなりがちで、冬は北風が直接吹き込みやすいため、断熱性の高い建物設計が必須
- 外干しよりも室内干しや乾燥機を活用した生活スタイル向け
- 暑さ・眩しさ・日焼けを避けたいシニア層や室温管理を重視する家庭には向いています
南向きの中地(バランス重視)
- 日当たりが良く、両側に建物があることで風当たりも適度に抑えられる
- 隣家の影響を受ける可能性があるものの、外構でコントロールしやすい
- 全体的にバランスが良く、幅広い世帯に適応しやすい立地
北向きの中地(やや暗く湿気がち)
- 日照時間が短いため、結露やカビ対策が重要
- 日差しが少ない分、夏場の暑さを和らげられるメリットも
- 省エネ住宅や高断熱設計との相性が良く、建築コストでカバーできる可能性も
角地によくある強風によるデメリットとは?
角地では風の通り道となる「吹き抜け」が発生しやすくなります。これにより、以下のような問題が生じることがあります。
- 洗濯物が飛ばされたり、干しづらい
- 自転車や植木鉢が倒れやすい
- 台風や強風時に屋根や雨戸、エクステリアへのダメージリスクが増す
とくに、南東向き・北西向きの角地は風の影響を受けやすいため、設計段階からの風対策が必要です。
後悔しないためにできること
風当たりが強い角地であっても、このような対策を行えば快適な住まいを実現することは十分可能です。
- 建物の形状や窓の配置で風の流れを調整
- バルコニーの囲いやウッドデッキにルーバーを設けて安全性を向上
- 外構設計に防風フェンスや防風ネットを活用する

ルーバーとは、細長い板や羽根状のパネルを一定の間隔で並べた建材で、視線を遮りつつ風や光を通す仕切りや目隠しのこと。
アルミ製ルーバー | 耐久性が高くメンテ不要。軽量で施工しやすい | 約20,000〜40,000円 |
木製ルーバー | 自然素材で外観になじみやすいが、腐食に注意 | 約30,000〜60,000円 |
樹脂製ルーバー | 木目調など見た目が自然で腐食しにくい | 約10,000〜30,000円 |
※上記は1ユニット(幅90〜120cm × 高さ120〜180cm)の目安価格です。
※施工費は別途(1箇所あたり3万円前後が相場)
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まとめ|角地を選ぶ前に知っておきたい3つのポイント
角地には確かに魅力がありますが、その反面、以下のような3つのデメリットがあることも事実です。
- 外からの視線が入りやすく、プライバシー確保に工夫が必要
- 外構費用や固定資産税が中地よりも高くなる傾向がある
- 風当たりが強く、洗濯やエクステリアへの影響が出ることもある
これらを踏まえたうえで、「それでも角地を選ぶ価値がある」と思えるかどうかを判断していただければと思います。
また、角地でも設計の工夫次第で快適な暮らしは実現できます。私たちあすなろ建築工房では、土地の条件を活かしながら、暮らしやすさを最大限に引き出す設計をご提案しています。
もし、角地を含めた土地選びや設計に関するご不安があれば、お気軽にご相談ください。あなたの理想の暮らしを、一緒にカタチにしていきましょう。
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