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熱的性能から見た住宅にふさわしい窓は?

快適な家とするためには、窓、つまりサッシの性能はとっても重要です。特に冬場で外気温が5度以下まで下がるような時にその違いが見えてきます。六ッ川の家では、実験的にいろいろな種類のサッシを取り付けています。5度以下に下がると朝の窓の様子を見ることで、サッシの性能差を知ることが出来ます。

ダイニングやリビングなどの大開口の掃き出し窓は、夜間は「防犯上」「コールドドラフト対策」「室内温度保持」のためにも、ハニカムスクリーンやカーテンなどの軽い遮蔽物を閉めたくなります。ガラスの内部に遮蔽物があると、その内外で温度差が生じ、ガラス面やサッシの障子面にて結露が生じやすくなります。

【①アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明ペアガラス)】

ダイニングの3枚引き掃き出し窓に使用しています。窓ガラスの下の1/3位と障子と呼ばれる枠部分にびっしりと結露が見られます。ここまで結露すると、雑巾などで結露を拭き取る作業が必要になります。これだけの量の結露をそのままにしていると、排水しきれない水が室内側に溢れたりして、室内側の仕上げや下地を腐らせてしまう可能性もあります。またカビを生じさせたり、シロアリを呼び込む原因にもなってしまいます。

アルミペア+ハニカム

2019年の1月11日~17日の1週間の実測の外気温、室内温度、室内湿度を用い、サッシの熱還流率を計算してシミュレーションした結果です。実情にぴったりあったもので、冬季は毎日のように結露していることが分かります。

【②アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明網入ペアガラス)+樹脂内窓(YKKapプラマードU、シングル透明ガラス)】

アルミサッシの内側にリフォーム工事などで使用される樹脂窓(シングルガラス)を設置しています。内側の窓ガラスの隅のガラス面に結露が見られます。雑巾で拭き取りが必要です。

【③アルミ樹脂複合(YKKapエピソード、透明ペアガラス)】

外側がアルミで、室内側が樹脂製のサッシです。ガラスの下部分に少し結露が見られます。雑巾でふき取りが必要です。

アルミ樹脂複合ペア+ハニカム

シミュレーション結果を見ると外気温が5度以下になる日には結露が生じていることが分かります。

【④樹脂(YKKap APW330、防火窓仕様 網入LOW-Eガラス 断熱タイプ)】

樹脂サッシのため、サッシの障子の熱伝導率が小さく、障子自体での結露はありません。防火窓仕様のため、ペアガラスのスペーサーと呼ばれる部分にアルミを使用しているため、ここの熱伝導率が高いために内側のガラスが冷えてしまい、結露を生じさせてしまっています。準防火地域内で窓を防火窓にする必要がある場合は、スペーサーはアルミスペーサーとなってしまいます。これくらいならば雑巾で拭き取らなくても、室内外の気温が上がってくると自然蒸発します。

樹脂サッシはアルミサッシと比べると剛性が低くなります。そのため、大きな掃き出し窓などは、内部に鉄のフレームが入っており、引き違い窓は開閉がかなり重くなります。

また引き違い窓は引き寄せ機能が無いため、気密性能が低くなるため、引き違い窓が多くなると、家全体の気密性能が悪くなる傾向があります。

APW330(防火窓仕様)+ハニカム

外気温が5度以下になる時に結露していることが分かります。結露量が限られていることもこのグラフから読み取れます。

APW330(非防火窓仕様)+ハニカム

準防火地域外であったり、準防火地域でも延焼線から外れる部分の窓は、非防火仕様とすることが出来ます。ガラスのスペーサーを樹脂にガラス間のガスをアルゴンガスにすることで、結露を抑えることが出来ることが分かります。

【⑤木製(アルス夢まど)、Low-Eペアガラス】

木製サッシのため、サッシの障子の熱伝導率が小さく、障子自体の結露はみられません。④と同じでスペーサーがアルミのため、窓ガラス端部に結露が見られます。木製窓は断熱性能も高く、閉める際に枠側に並列に障子を引き寄せる引き寄せ機構があるため開閉も軽く高い気密性があります。見た目もよいものなので、サッシとしての性能は抜群です。

【⑥樹脂トリプルガラス(YKkap APW430、Low-Eトリプルガラス)】

断熱性能を高めた樹脂サッシにLow-Eトリプルガラスを入れたもの。北海道では一般的なサッシです。さすがに結露がありません。可能であれば、このレベルのサッシを設置したいですね。残念なことに防火窓対応品はありません。準防火地域だと使えないのが残念です。

APW430(樹脂スペーサー)+ハニカム

シミュレーションを見ても、結露が出来るようなリスクは見られません。

アルミペアのみ

APW330(防火窓仕様)のみ

参考までに、窓の内側にハニカムスクリーンを設置しない場合のシミュレーションを行ってみた結果です。

室内側に遮蔽物が無い状態となるので、室内の温度で窓サッシ自体を温めることができるので、結露を抑えることが出来ますが、窓の冷気で室内が冷えてしまったり、コールドドラフト(窓面から冷たい空気が吹き下ろす現象)が起こる可能性が高くなります。

アルミサッシでは結露を止められないことが分かります。アルミスペーサーを使用した防火窓仕様の樹脂窓であれば、ギリギリ結露を抑えることが出来ることが読み取れます。

【まとめ】

室内でどんなに加湿しても、窓の性能が低いと、上記の写真のようにどうしても窓で結露してしまいます。「結露する」ということは、ある意味で除湿していることと同じです。どんなに加湿してもある一定レベル以上の湿度をキープすることは出来ないものです。

室内条件にも寄りますが、結露を気にしない生活をするためには、樹脂以上のクラスの窓が必要と言えます。

準防火地域は使用できる窓種も限られてきます。大きな掃き出し窓は延焼線を避けることが出来る位置に配置するなど設計上の工夫が必要となります。

引き違い窓は、気密性能も低くなり、大きな開口を持つ場合には重量も重くなり開閉が困難になります。大きな掃き出し窓は価格が高くはなりますが、木製窓にするなどが良いと思います。

●まずは樹脂窓以上の性能にする

●大きな窓は木製窓の採用も検討してみる

●防火窓でなければ、樹脂スペーサー、アルゴンガスにする

●室内側の遮蔽物(ハニカムスクリーン、障子、カーテン)も一緒に考える

以上の観点で、窓選びして頂ければと思います。


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