擁壁の補修に補助金は使える?対象になりやすい工事って?

自宅の擁壁にひび割れや傾きが見つかると、「早く直さなければ」と思う一方で、工事費用への不安も大きくなるものです。

擁壁は住宅の外側にあるため、普段の暮らしでは状態を意識しにくく、どこへ相談すればよいか分からない方も少なくありません。

さらに、「擁壁の補修に補助金が出るらしい」と聞いても、ひび割れを埋める工事から全面的な造り直しまで、どの工事が対象になるのかは制度によって異なります。

先に工事会社と契約した結果、助成制度を利用できなくなるケースもあるため、工事内容を決める前に申請の順番を知っておくことが大切です。

この記事では、擁壁の補修に利用できる補助金・助成金について、対象になりやすい工事と対象外になりやすい工事、横浜市で利用できる制度、申請から工事完了までの流れを解説します。

情報

なお、擁壁の状態は外見だけで判断できるとは限りません。

補助金の利用可否だけを先に考えるのではなく、必要な工事と将来の維持管理を確認したうえで制度を活用しましょう。

擁壁の補修で補助金・助成金を利用できるのはどのような工事?

補助金・ローンで地盤補強費用を賢くカバーする方法

「擁壁の補修」と聞くと、壁面のひび割れを埋めたり、表面を塗り直したりする工事を想像するかもしれません。

しかし、自治体の助成制度は、単に見た目をきれいにする工事ではなく、擁壁や崖地の崩壊による被害を防ぐための工事を主な対象としています。

同じひび割れがある擁壁でも、表面だけが傷んでいるのか、壁全体が動いているのか、背面に水がたまっているのかによって必要な対策は変わります。

まずは予定している工事が防災・減災を目的とした制度の対象に該当するかを確認しましょう。

チェック

土地所有者等には擁壁の崩壊によって第三者へ被害を与えないよう適切な維持管理に努める必要があるとしたうえで、防災工事や復旧工事には多額の費用が必要になるため、県内の一部市町村が助成制度を設けていると案内しています。

一律に同じ金額を給付する制度ではなく、対象条件や助成額、申請窓口は市町村ごとに異なります。

擁壁の補修・補強・造り直しは同じ工事ではない

擁壁に異変が見つかった場合でも、すべての擁壁を壊して新しく造り直すとは限りません。

表面の傷みへ対応する補修、既存擁壁を残して安全性を高める補強、既存擁壁を撤去して新しい擁壁を造る工事では、目的も工事範囲も大きく異なります。

国土交通省の「宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル」でも、現地の状態に応じて、補修・再構築・補強などの対策方針を検討する考え方が示されています。

そのため、助成制度を探す前に、どのような対策が必要なのかを整理することが出発点になります。

対応方法主な目的工事の例助成対象の考え方
表面的な補修表面の傷みを整える小さな欠損の補修美観目的は対象外の場合がある
排水改善背面の水を逃がす地下水排除工対象工法になる場合がある
構造的な補強既存擁壁を支える鉄筋挿入(アンカーピン工法)・金網補強対象になる場合がある
部分的な改修傷んだ範囲を更新する一部撤去・再施工自治体によって判断が異なる
全面的な造り直し擁壁を新しくするRC擁壁の築造対象になる場合がある

表面に小さなひび割れしか見えなくても、壁の傾きや地盤の沈下、排水不良が同時に起きていることがあります。

反対に、壁面の汚れや仕上げの剥がれが目立っていても、直ちに全面的な造り直しが必要とは限りません。

擁壁の状態に必要な工事を確認し、その工事に利用できる制度を探す順番が大切です。

補助金・助成金の対象になりやすい擁壁工事ってどんなもの?

自治体の制度は、個人の所有物を新しくきれいにするための支援ではなく、崖崩れや擁壁の倒壊による被害を減らす目的で設けられています。

そのため、住宅や道路、隣地などへ被害が及ぶおそれのある擁壁・崖地を対象とした防災工事や減災工事は、助成対象になる可能性があります。

横浜市の崖地減災対策工事助成金制度では、擁壁の築造だけでなく、地下水を排出する工事、既存擁壁の補強、増し積み部分の撤去なども対象工法として挙げられています。

参考元:「横浜市崖地【減災】対策工事助成金制度について」

ただし、工法名が同じであっても、崖地の高さや傾斜、周囲への影響などの条件を満たさなければ利用できません。

対象になる可能性がある工事には、次のようなものがあります。

補助金の対象になる可能性がある工事

  • 既存擁壁を残しながら支える補強工事
  • 鉄筋やアンカーなどを用いて斜面や擁壁の動きを抑える工事
  • 擁壁の背面にたまる地下水を排出する工事
  • 崩れた土砂を受け止める擁壁を設ける工事
  • 自然崖の表面を保護する工事
  • 不安定な増し積み部分を撤去する工事
  • 既存擁壁を撤去し、新しい擁壁を築造する工事

ここで注意したいのは、一般的な会話でいう「補修」と、助成制度上の対象工事が一致するとは限らないことです。

施工会社から「補修工事」と説明された場合でも、制度上は擁壁補強工事や地下水排除工など、別の工法として扱われることがあります。また、ひび割れを埋める工事だけでは、崩壊防止につながる防災・減災工事とは認められない可能性もあります。

*補助の対象は、自治体によって大きく変わります。

見積書の名称だけで判断せず、自治体の担当窓口へ工事内容や図面を示して確認しましょう。

ひび割れを埋めるだけの補修は対象にならないことがある

擁壁表面にひび割れを見つけると、まずはひび割れを埋めて雨水が入らないようにしたいと考える方もいるでしょう。

しかし、ひび割れの補修が助成対象になるかどうかは、その工事が擁壁の安全性を高め、崩壊による被害を防ぐものと判断されるかによって変わります。

単に見た目を整える塗装や仕上げの補修は、助成制度の目的と合わず、対象外となる可能性があります。一方で、構造的な補強や地下水対策の一部として補修を行う場合には、制度の対象工事に含まれる可能性があります。

たとえば、同じ「ひび割れがある」という状態でも、次のように状況は異なります。

同じひび割れでも対応が異なるケース

  • 雨のあとに細いひび割れから水が染み出すものの、擁壁全体に傾きは見られない。
    ⇒排水状態の確認が必要かもしれません。
  • 擁壁の中央が道路側へ膨らみ、以前よりひび割れが広がっている。
    ⇒表面の補修だけではなく、擁壁全体の動きや地盤の状態を調べる必要があります。
  • 擁壁の上に積み足されたブロックが傾き、下の道路側へ落下するおそれがある。
    ⇒増し積み部分の撤去や別の安全対策が検討される可能性があります。

見た目が似ていても必要な工事は異なるため、「ひび割れがあるから、この補修をすればよい」と早い段階で決めつけないことが重要です。

また、小さなヒビ割れ補修で補助金を使ってしまった場合、数年後に擁壁全体の補修ややり替えを行いたいとなった場合に、過去に補助金を受けてしまっていることで、補助が得られなくなる場合もあります。

擁壁工事における補助金・助成金の対象外になりやすいケース

擁壁工事であれば、どのような内容でも助成を受けられるわけではありません。

対象となる崖地の高さや傾斜角度、周囲の住宅や道路へ被害が及ぶ可能性、工事の目的など、制度ごとに複数の条件が定められています。

さらに、工事内容が条件を満たしていても、申請前に契約・着工していると利用できない制度があります。工事を急ぐあまり順番を間違えると、対象になり得た工事でも助成を受けられなくなるため注意が必要です。

対象外になりやすい例確認したいこと
見た目を整える工事防災・減災を目的としているか
自己判断による部分補修対象工法として認められるか
交付決定前の着工申請と契約の順番
条件未満の崖地高さ・傾斜・周囲への影響
対象外の施工会社との契約所在地などの事業者条件
所有関係が不明な擁壁申請者に工事権限があるか
年度内に完了できない工事完了報告の期限

「小さな工事だから先に進めてもよいだろう」と考え、補修後に領収書を提出しても、後から助成金を受け取けとることは出来ません。多くの補助金は事前の申請が必要です。

制度を利用する場合、市内に本社がある事業者との工事契約が必要になるなど、施工会社にも条件があります。工事金額だけを比較して施工会社を決める前に、制度の対象となる事業者かどうかも確認しましょう。

補助金を使うために必要以上の工事を選ばないように

補助金が利用できると聞くと、「対象になる工法のなかで、助成額が最も大きい工事を選んだ方が得なのでは」と感じるかもしれません。

しかし、擁壁は土地の高低差を支え、住宅や道路、隣地の安全にも関係する構造物です。

助成上限が高い工法だからという理由だけで工事方法を選ぶことはできません。
自己負担額を抑えることだけを優先し、必要な補強や排水対策を省くことも避けなければなりません。

工事方法を考えるときは、補助金の対象になる工法から選ぶのではなく、擁壁の状態を確認するところから順番に進めます。

助成額が大きい工法であっても、その擁壁に必要な対策でなければ選ぶことはできません。反対に、自己負担額を抑えるために必要な補強や排水対策を省くと、数年後に再び工事が必要になる可能性があります。

擁壁・崖地の状態を確認する
    ↓
周囲へ及ぶ可能性がある影響を確認する
    ↓
必要な補修・補強方法を検討する
    ↓
工事が助成制度の対象になるか確認する
    ↓
助成後の自己負担額と将来の維持費を考える

安全性、助成制度、将来の維持費を切り離さず、次の順番で検討することが大切です。
擁壁・崖地の状態を確認する
最初に行うのは、壁全体と周辺の地面を確認することです。

ひび割れ、膨らみ、傾き、水染み、継ぎ目のずれなどがないかを見ます。

✅擁壁の上にある地面が沈んでいないか
✅擁壁の下へ土砂が流れ出していないか
✅水抜き穴が詰まっていないか


も確認したいポイントです。

ただし、ひび割れの幅や見た目だけで危険性を判断することはできません。表面の仕上げだけが傷んでいる場合もあれば、擁壁全体の動きによってひび割れが生じている場合もあるためです。

気になる箇所は近くから撮影するだけでなく、擁壁全体や建物、道路との位置関係が分かる写真も残しましょう。過去の写真があれば、同じ位置から現在の状態を撮影すると、変化を専門家へ伝えやすくなります。
擁壁が崩れた場合に周囲へ及ぶ影響を確認する
次に、擁壁や崖地に問題が起きた場合、どこへ影響が及ぶ可能性があるかを確認します。

擁壁の下に道路や隣家がある場合は、土砂やコンクリート片が敷地外へ流出するおそれがあります。擁壁の上に住宅、車庫、駐車場がある場合は、擁壁の変形によって建物や地面へ影響が生じる可能性もあります。

具体的には、次のような位置関係を確認します。

✅擁壁の上に住宅や車庫が建っている
✅擁壁の下が道路や通学路になっている
✅擁壁のすぐ近くに隣家がある
✅擁壁の上へブロック塀が積み足されている
✅崩れた土砂を受け止める空間がない
✅雨水が擁壁側へ集中して流れ込んでいる


擁壁の助成制度は、個人の所有物をきれいにすることではなく、崩壊による被害を防ぐことを主な目的としています。そのため、住宅や道路などへ被害が及ぶおそれがあるかどうかは、制度の対象を判断するうえでも重要です。

擁壁そのものの傷みだけではなく、崩れた場合に誰の暮らしや安全へ影響するのかまで確認しましょう。
状態に合った補修・補強方法を検討する
擁壁と周辺への影響を確認したら、専門家による調査をもとに必要な工事方法を検討します。

小さな欠損を整える表面的な補修で対応できる場合もあれば、擁壁の背面にたまった水を逃がす工事、既存擁壁を残したまま支える補強工事、全面的な造り直しが必要になる場合もあります。

✅表面に小さな欠損がある
✅背面に水がたまっている
✅擁壁の一部が不安定である
✅増し積み部分が傾いている
✅擁壁全体の利用が難しい


同じように見えるひび割れでも、原因や擁壁の構造、地盤の状態によって必要な工事は変わります。

表面をきれいにするだけでは、背面の排水不良や擁壁全体の傾きを解決できないことがあります。一方で、古いという理由だけで、直ちにすべてを壊して造り直す必要があるとも限りません。

補助金を利用できる工法を探す前に、その擁壁へ本当に必要な対策を明らかにすることが重要です。
必要な工事が助成制度の対象になるか確認する
工事方法の方向性が決まったら、その工事が自治体の助成制度に該当するかを確認します。

自治体によっては、擁壁の築造や補強だけでなく、地下水を排出する工事、法面を保護する工事、不安定な増し積み部分を撤去する工事なども助成対象としている場合があります。

ただし、同じ工法でも、すべての土地で利用できるわけではありません。崖地の高さや傾斜、住宅や道路への影響、土地の所有関係、施工会社の所在地など、複数の条件が設けられています。

施工会社から受け取った見積書に「擁壁補修工事」と書かれていても、自治体の制度上は「擁壁補強工事」や「地下水排除工」など、別の区分に該当することがあります。

また、多くの制度では、交付決定前に工事契約や着工をすると助成を受けられません。工事を急いで契約する前に、所在地、写真、図面、予定している工法などを自治体の担当窓口へ伝え、対象になる可能性を確認しましょう。
助成後の自己負担額と将来の維持費を考える
助成制度の対象になることが分かったら、最終的にいくら自己負担するのかを確認します。

助成制度には、対象工事費に対する助成割合だけでなく、工法別の算定額や上限額が設けられていることがあります。そのため、工事費が高額であっても、一定割合がそのまま助成されるとは限りません。

また、見積書に含まれるすべての項目が助成対象になるわけではありません。擁壁工事後に行う門扉、階段、駐車場、庭などの復旧費用は、別途自己負担になる場合がほとんどです。

初期費用が小さい工法でも、原因を十分に解消できず、短期間で補修を繰り返すことになれば、生涯を通じた負担が大きくなる可能性があります。反対に、必要以上に大きな工事を行えば、初期費用が過剰になることもあります。

助成金によって今回いくら安くなるかだけではなく、必要な安全性を確保しながら、将来のライフサイクルコストを抑えられる工事かどうかまで比較しましょう。

助成制度を利用できても、工事費の全額が支給されるとは限りません。
また、初期費用が小さい方法を選んでも、根本的な原因を解消できず、短期間で補修を繰り返せば、将来の維持費が大きくなる可能性があります。

目先の自己負担額だけでなく、必要な安全性と将来のライフサイクルコストを含めて工法を比較することが大切です。

補助金は工事方法を決める目的ではなく、必要な対策を実施するための支援として考えましょう。

擁壁の補修に利用できる補助金・助成金の種類と調べ方

擁壁の補修に利用できる制度は、全国共通の補助金として一律に設けられているわけではありません。
土地がある都道府県や市区町村が、地域の地形や災害リスクに合わせて、独自の助成制度を設けている場合があります。

制度名も「擁壁補修助成金」とは限らず、宅地防災、崖地対策、急傾斜地対策などの名称で案内されていることがあります。

そのため、制度名だけを探すのではなく、予定している工事がどのような目的・区分に該当するのかを確認することが大切です。

擁壁の補助制度は自治体ごとに内容が異なる

擁壁の補修や造り直しに関する助成制度は、主に市区町村が設けています。

都道府県が市区町村の制度を一覧で紹介している地域もありますが、実際の申請窓口、対象条件、助成額は市区町村ごとに異なるのが一般的です。

神奈川県も、擁壁の防災工事や復旧工事には多額の費用がかかることから、個人などが工事を行う場合に市町村が設けている助成制度を案内しています。

同じ都道府県内でも、隣接する市では制度がある一方で、別の市では該当する制度が設けられていないことがあります。また、制度があっても、対象となる擁壁や工事方法、申請できる人の条件は同じではありません。

インターネットで見つけた他地域の助成額を、そのまま自宅の擁壁に当てはめないことが重要です。

自治体によって異なる主な項目は、次のとおりです。

確認項目自治体によって異なる内容
制度の有無擁壁工事を対象とする制度があるか
対象となる土地個人宅、住宅地、道路沿いなど
擁壁の条件高さ、傾斜、構造、周囲への影響
対象工事補修、補強、排水、造り直しなど
助成額助成率、算定単価、上限額
施工会社所在地や資格などの条件
申請時期契約前、着工前など
完了期限年度内の工事・報告期限

👆制度があるかどうか+これらの条件をすべて確認する必要があります。

たとえば、擁壁を新しく造る工事は対象でも、表面の塗装や小さな欠損の補修は対象外となる場合があります。反対に、既存擁壁を残したまま行う補強や排水改善を、減災対策として助成している自治体もあります。

制度の対象か判断できない場合は、工事内容を決めてから問い合わせるのではなく、擁壁の写真や所在地を準備し、早い段階で自治体へ相談しましょう。

擁壁の造り直しや防災工事を対象とする制度

自治体の助成制度には、既存擁壁を撤去し、新しい擁壁を造る工事や、崖崩れを防ぐための比較的大きな工事を対象とするものがあります。

主な対象工事として考えられるのは、次のような工事です。

既存擁壁を撤去して新しく造る工事

擁壁全体の傾きや大きな変形があり、既存擁壁を残したまま安全性を確保することが難しい場合には、撤去して新しい擁壁を造る方法が検討されます。

自治体によっては、このような防災性を高める工事を助成対象としています。

防災性を高める工事

新しい擁壁の築造では、壁だけではなく、地中に設ける基礎、背面の排水、地盤、周囲の建物や道路との距離などを含めて計画します。既存擁壁の解体や土砂の搬出、工事車両の進入経路によって、工事規模が大きくなることもあります。

ただし、新しく擁壁を造る工事であれば、どのような土地でも対象になるわけではありません。

擁壁の高さや傾斜、崩壊した場合に住宅や道路へ被害が及ぶ可能性など、複数の条件を満たす必要があります。

条件によっては「やり替えが出来ない」という場合も考えられます。

崩れた土砂を受け止める工事

自然崖や斜面をすべて削り直すことが難しい場合には、崩れた土砂が住宅や道路まで流れ込まないよう、斜面の下に擁壁や防護施設を設ける方法が検討されることがあります。

このような工事は、崩壊そのものを完全に防ぐのではなく、崩れた場合の被害を小さくすることを目的としています。

住宅密集地や道路沿いでは、崩れた土砂が敷地内だけにとどまらず、通行人や隣家へ影響する可能性があります。そのため、個人の資産を守る工事というだけでなく、周囲への被害を防ぐ防災工事として扱われる場合があります。

ただし、必要となる施設の大きさや位置は、斜面の高さ、土質、周辺の空間によって変わります。敷地に設置できる余裕があるかも含めて検討しなければなりません。

崖や斜面そのものを安定させる工事

コンクリートの擁壁がない自然崖や土の斜面では、斜面の表面を保護したり、地中へ鉄筋などを挿入したりして、崩れにくくする工事が行われることがあります。

助成対象となりえる工事

自治体によっては、法面保護工事、斜面安定工事、地滑り対策工事などの名称で助成対象にしています。

どの工法を選ぶかは、斜面の傾斜や土質、湧き水の有無、住宅との距離などによって異なります。見た目が似た崖地でも、表面を覆う工事だけで対応できる場合と、地中まで補強する必要がある場合があります。

助成対象として掲載されている工法から選ぶのではなく、現地の状態に必要な工法を確認したうえで制度を利用しましょう。

既存擁壁の補強や減災工事を対象とする制度

擁壁の助成制度には、全面的な造り直しだけでなく、既存擁壁を残しながら安全性を高める工事を対象とするものもあります。

自治体によっては、「減災対策」「既存擁壁補強」「宅地安全対策」などの名称で案内されています。例えば横浜市でも、法令上の手続きを要する工事を中心とした防災対策と、既存擁壁の補強などを含む減災対策を分けて助成しています。

ただし、全国の自治体が同じように2制度へ分けているわけではありません。1つの制度のなかで、造り直しから補強までをまとめて対象としている場合もあります。

既存擁壁を残して補強する工事

既存擁壁の前面や背面、地中から支えることで安全性を高める工事です。

敷地が狭く大規模な解体が難しい場合や、建物が擁壁に近接している場合に検討されることがあります。ただし、既存擁壁の状態によっては補強だけでは対応できないため、必ず選べる方法ではありません。

補強方法には、鉄筋などを地中へ挿入する方法、壁面を補強材で支える方法、新しい構造物を前面に設ける方法などがあります。

自治体の制度では、工法や補強範囲が細かく定められている場合があります。施工会社の提案内容が制度上の対象工法に該当するか、図面や見積書を用いて確認しましょう。

注意

注意が必要なのが「見た目だけがきれいになる補修」です。

既存の間知石擁壁や大谷石擁壁の上にモルタルを塗るだけで済ませてしまっている工事を多く見かけます。

まさに見た目だけがきれいになっている工事です。しかもご丁寧に、鉄筋コンクリートのフリをして、目地やPコンを筆で描いている場合などもあります。

これらは、見た目だけがきれいになっているだけで、擁壁としての安全性が高まっていることではないので、要注意です。

擁壁の背面にたまる水を排出する工事

擁壁の背面に雨水や地下水がたまると、壁を押す力が大きくなることがあります。

そのため、地中に排水設備を設けたり、水の流れを整えたりする工事が必要になる場合があります。

助成対象となりえる工事

自治体によっては、地下水排除工事や排水対策工事を、擁壁の崩壊を防ぐための助成対象としています。

ただし、水抜き穴を清掃したり、壁面から染み出す水を止めたりするだけで、原因を解決できるとは限りません。敷地内の雨水が擁壁側へ集中している場合は、庭や屋根から流れる水の経路も含めて見直す必要があります。

排水対策は完成後に見えにくくなる部分ですが、擁壁を長く使ううえで重要です。表面の仕上がりだけでなく、どのように水を逃がす計画になっているかを確認しましょう。

不安定な増し積み部分を撤去する工事

古い住宅地では、擁壁の上にコンクリートブロックなどを積み足し、土地の高さを確保していることがあります。

擁壁本体と一体になっていない増し積み部分は、地震や強い雨のあとに傾いたり、道路や隣地へ落下したりする可能性があります。

助成対象となりえる工事

自治体によっては、不安定な増し積み部分を撤去する工事を助成対象としています。

ただし、増し積み部分を取り除くと、庭や通路、塀の高さが変わることがあります。排水のためのU字溝を新設したり、雨水排水桝の移設が必要になったりします。撤去後にどのような形で敷地を安全に利用するのかまで考えなければなりません。

撤去費用だけでなく、転落を防ぐ柵や階段、庭の復旧など、助成対象外となる可能性がある費用も含めて計画しましょう。

落石や土砂の流出を防ぐ工事

崖地によっては、擁壁の造り直しよりも、減災対策として助成対象になりえる工事があります。

助成対象となりえる工事

落石防護網や柵などを設け、石や土砂が住宅・道路まで到達するのを防ぐ工事

ただし、防護網や柵を設ければ崖そのものが安定するわけではありません。崩落や落石が起きた際の被害を抑える目的であり、斜面の状態に応じて別の対策と組み合わせる場合があります。

防災工事と減災工事は優劣で選ぶものではなく、擁壁や崖地の状態に応じて役割が異なります。

助成制度の名称だけで対象工事を判断しない

自治体によって、擁壁工事を対象とする制度の名称は大きく異なります。

「擁壁補修」という名称で探しても見つからない場合がありますが、「宅地防災」「崖地対策」「急傾斜地」「斜面対策」といった制度のなかに擁壁工事が含まれている可能性があります。

制度を探す際は、次のようなキーワードを組み合わせて検索してみましょう。

キーワード

「自治体名+擁壁+補助金」

「自治体名+崖地+助成金」

「自治体名+宅地防災+補助金」

「自治体名+急傾斜地+助成」

「自治体名+擁壁補強+補助」

「自治体名+法面工事+助成金」

検索結果には、過去年度の制度や受付終了後のページが表示されることがあります。

制度名が同じでも、年度によって助成額、受付期間、施工会社の条件などが変更される可能性があります。ブログや施工会社の紹介記事だけでなく、自治体の公式サイトで最新情報を確認してください。

公式サイトで見つからない場合は、建築指導、防災、宅地造成、開発指導、都市計画などを担当する部署へ問い合わせます。担当部署が分からない場合は、自治体の代表窓口へ「個人宅の擁壁補修に利用できる制度について相談したい」と伝えましょう。

助成対象になりやすい条件を確認する

自治体の助成制度では、工事方法だけでなく、擁壁や崖地の位置、規模、周囲への影響なども確認されます。

特に重視されやすいのは、擁壁や崖地が崩れた場合に、住宅、道路、通行人、隣地などへ被害が及ぶ可能性です。個人の敷地内で見た目を整える工事よりも、災害による第三者への被害を防ぐ工事の方が、制度の目的に合致しやすくなります。

主な確認条件には、次のようなものがあります。

確認される項目内容の例
崖地の高さ自治体が定める高さを超えているか
傾斜一定以上の急な傾斜であるか
周囲への影響住宅や道路へ被害が及ぶおそれがあるか
土地の用途居住用の住宅地などに該当するか
工事の目的防災・減災を目的としているか
所有関係申請者に工事を行う権限があるか
施工会社地域や資格などの条件を満たすか

*ここに挙げた条件は、全国共通の認定基準ではありません。

自治体によっては、擁壁の高さだけでなく、道路からの距離や、崩壊した場合の影響範囲を細かく定めています。反対に、高さが基準へ達していなくても、道路などへ影響するおそれがある場合に対象となる制度もあります。

現地を見て「2mくらいありそう」「かなり傾斜が急に見える」と感じても、目測だけでは判断できません。高さや傾斜、住宅・道路との位置関係を測り、自治体の基準と照らし合わせる必要があります。

また、助成制度の基準を満たしていないことが、擁壁の安全性を意味するわけではありません。助成対象になるかどうかと、安全に使い続けられるかどうかは、別の判断です。

助成額は助成率と上限額だけでは決まらない

擁壁工事の助成制度では、「工事費の2分の1」「上限100万円」などと案内されることがあります。

しかし、工事費が300万円で助成率が2分の1だからといって、必ず150万円を受け取れるわけではありません。上限額が100万円であれば、助成額は最大100万円です。

さらに自治体によっては、次のような複数の基準を比較し、最も少ない金額を助成額とする場合があります。

助成金
  • 助成対象工事費に一定の割合を掛けた金額
  • 自治体が定めた工法別の算定額
  • 擁壁の面積などから計算した金額
  • 制度で定められた上限額
  • 予算の範囲内で認められた金額

工法別単価が示されている場合も、その数字は実際の工事相場ではなく、助成額を計算するための単価である可能性があります。

擁壁工事では、壁を造る費用だけでなく、既存擁壁の解体、土砂の搬出、工事車両の進入路、足場、排水設備、設計、行政手続きなどの費用が発生します。自治体の算定単価だけを見て、工事総額を予想しないようにしましょう。

助成額を確認するときは、次の3つを分けて考えます。

金額確認する内容
1.工事総額工事全体にかかる費用
2.助成対象工事費制度上、助成対象と認められる範囲
3.実際の助成額助成率・算定額・上限額で決まる金額

たとえば、擁壁の補強工事自体は助成対象でも、工事後に復旧する門扉、植栽、庭、駐車場の仕上げなどは、対象外になる可能性があります。

見積総額から制度の上限額をそのまま差し引くのではなく、どの項目が助成対象になるかを自治体へ確認することが重要です。

擁壁工事そのものの費用がどのように決まるのかを確認したい方は、次の記事も参考にしてください。

擁壁の高さや長さだけでは工事費を判断できない理由と、解体、地盤、道路幅、排水、建物との位置関係によって費用が変わる仕組みを解説しています。

助成金を利用できる場合でも、工事費の全額が支給されるとは限りません。

助成後に必要となる自己負担額だけでなく、将来の点検や排水設備の管理、周辺の外構を補修する費用も含めて予算を考えましょう。

防災工事と減災工事は目的によって役割が異なる

自治体の制度によっては、擁壁や崖地の工事を「防災工事」と「減災工事」のように分けている場合があります。

一般的には、擁壁を造り直したり、斜面そのものを安定させたりする工事は、崩壊を防ぐことを目的としています。一方で、既存擁壁の補強や落石防護柵の設置などは、崩壊する可能性や被害の大きさを抑えることを目的とする場合があります。

ただし、これらの名称や区分は全国共通ではありません。

比較する視点防災を目的とする工事の例減災を目的とする工事の例
主な目的崩壊を防ぐ崩壊の可能性や被害を抑える
工事の例擁壁の築造・斜面の安定化既存擁壁の補強・落石対策
工事規模比較的大きくなる場合がある部分的な対策もある

この表は、すべての自治体制度に共通する正式な区分ではなく、工事目的の違いを理解するための目安です。

自治体によっては、防災工事と減災工事を分けず、1つの制度内で複数の工法を対象としています。また、施工会社が「補修」と呼んでいる工事が、制度上は補強工事や排水対策工事として扱われる場合もあります。

「補助率が高い制度を選びたい」「上限額の大きな工事にしたい」と考えるのではなく、擁壁に必要な工事が、自治体のどの制度や工法区分に該当するかを確認しましょう。

補助制度を調べるときは最新年度の公式情報を確認する

擁壁の補助金・助成金は、年度ごとの予算に基づいて実施されることがあります。

前年度に利用できた制度でも、翌年度に助成額や条件が変更されたり、受付期間が短縮されたりする可能性があります。申請件数が予算へ達した時点で受付を終了する制度もあります。

確認する際は、少なくとも次の項目を確認しましょう。

確認すべき項目

  • 対象となる擁壁や崖地の条件
  • 対象となる工事方法
  • 助成率と上限額
  • 申請できる人の条件
  • 施工会社に関する条件
  • 申請受付の開始日と終了日
  • 工事を完了する期限
  • 完了報告書を提出する期限
  • 契約・着工してよい時期
  • 申請時に求められる資料

特に注意したいのが、工事契約と着工の時期です。

横浜市の制度でも、事前相談が必要とされ、交付決定前に契約・着工した場合は助成を利用できないと案内されています。

施工会社から「工事日程を確保するため、先に契約だけしておきましょう」と提案された場合でも、契約してよいかを自治体へ確認してください。

制度が見つかった段階で工事を進めるのではなく、自治体への事前相談、現地調査、申請、交付決定、契約、着工という順番を守ることが大切です。

住んでいる地域に制度がない場合の相談先

自治体の公式サイトを調べても、擁壁工事に利用できる助成制度が見つからないことがあります。

その場合でも、すぐに「利用できる制度はない」と判断せず、自治体の担当部署へ問い合わせてみましょう。制度名に擁壁という言葉が使われていない場合や、ウェブサイトに詳しい条件が掲載されていない場合があるためです。

相談先として考えられるのは、次のような部署です。

相談先の例主な相談内容
建築指導・建築防災擁壁の安全性や工事制度
防災担当崖崩れや土砂災害への対策
道路管理道路へ影響する擁壁
住宅担当住宅に関する補助制度

自治体の制度がない場合でも、急傾斜地の崩壊対策など、土地所有者が単独で行う補助工事とは異なる公的な事業が関係する可能性があります。

ただし、そのような事業には、斜面の高さ、住宅戸数、危険区域の指定など、別の条件が設けられています。個人の希望だけで工事を実施できるものではありません。

まずは擁壁の所在地と状況を伝え、利用できる制度や相談窓口がないか確認しましょう。擁壁が道路や隣地へ傾いている、土砂が流出しているなど、緊急性が高い場合は、補助制度の有無を調べるより先に自治体へ連絡してください。

擁壁補修の補助金を利用する流れと申請前の注意点

擁壁の補助金で特に注意したいのが、【相談・申請・契約・着工の順番】です。

一般的な住宅工事では、施工会社に相談して見積もりを取り、契約してから各種手続きを進めることがあります。

しかし、擁壁の助成制度では、交付決定前の契約や着工を認めていないケースがあるため、通常の工事と同じ感覚で進めると利用できなくなる可能性があります。

擁壁に気になる変化が見つかっても、緊急性が高い場合を除き、まず自治体と専門家へ相談して必要な手順を確認しましょう。

最初に自治体の担当窓口へ相談する

擁壁の助成制度を利用したい場合は、施工会社と工事契約を結ぶ前に、土地がある自治体の担当窓口へ相談します。

どの自治体でも、防災対策工事・減災対策工事のいずれも、建築防災課のがけ防災担当との事前調整が必要とされています。

電話や窓口で「擁壁を補修したい」と伝えるだけでなく、所在地、擁壁の高さ、気になっている変化、周囲の状況などを説明できるようにしておきましょう。

写真や図面があれば、相談時の判断材料になります。

相談前には、次のような情報を事前に整理しておくと話が進みやすくなります。

  • 擁壁がある土地の住所
  • 擁壁のおおよその高さと長さ
  • ひび割れ、傾き、水染みなどの状況
  • 擁壁の上と下に何があるか
  • 変化に気づいた時期
  • 雨や地震のあとに変化があったか
  • 設計図や検査記録の有無
  • 過去に行った補修工事の内容
  • 現在相談している事業者の有無

写真を撮る場合は、ひび割れだけを大きく撮影するのではなく、擁壁全体と周囲の住宅・道路との関係が分かる写真も用意します。

近距離の写真だけでは、擁壁がどちらへ傾いているか、崩れた場合にどこへ影響が及ぶかを把握しにくいためです。

過去の写真があれば、同じ位置から撮影した現在の写真と比べることで変化を伝えやすくなります。
ただし、写真だけで安全性や工事方法を断定せず、現地調査へつなげる資料として活用しましょう。

見積もりと工事計画を整える

必要な工事方法の方向性が決まったら、施工会社から見積書や工事計画を取得します。

擁壁工事

擁壁工事は、壁面の補強部分、足場、仮設、掘削、残土処分、排水、周辺の外構復旧などが必要になる場合があります。

見積書に「擁壁補修工事一式」とだけ書かれていると、どの工事が助成対象で、どの部分が自己負担になるのかを確認しにくくなります。

申請書類として必要になる情報もあるため、工事項目をできるだけ具体的に分けてもらいましょう。

見積書では、少なくとも次の点を確認します。

見積書で確認すべき項目

  • 既存擁壁の解体や撤去を含むか
  • 補強工事の工法と施工範囲
  • 地下水や雨水への対策
  • 足場や仮設工事の費用
  • 掘削した土や廃材の処分費
  • 擁壁周辺の塀・階段・庭の復旧費
  • 設計や行政手続きの費用
  • 助成対象外となる工事項目
  • 工事中に追加費用が発生する条件

助成対象工事費と、実際に支払う工事総額は一致しないことがあります。

たとえば、擁壁の補強は対象になっても、工事後に造り直す門扉や植栽、仕上げの一部は対象外となる可能性があります。

見積総額から助成上限額を単純に差し引くだけでは、正確な自己負担額を計算できません。
自治体に提出する見積書と、暮らしを元に戻すために必要な総額の両方を把握しておきましょう。

交付決定後に契約・着工する

申請書類を提出し、審査を経て交付決定を受けたあとに、施工会社と工事契約を結び、工事へ着手します。

2026年度制度

2026年度制度では、交付決定前に工事契約または工事へ着手している場合、助成制度を利用できないとされています。また、市内に本社がある事業者と工事契約を結ぶことも利用条件です。

「申請予定だから先に材料だけ発注する」といった行為が着手と判断されないかも含め、迷う場合は事前に自治体へ確認しましょう。

一般的な流れは、次のようになっています。

自治体へ事前相談
   ↓
擁壁・崖地の現地確認
   ↓
工事方法と見積書の作成
   ↓
助成金の交付申請
   ↓
自治体による審査
   ↓
交付決定
   ↓
施工会社との契約
   ↓
工事着手・工事完了
   ↓
助成金額の確定・交付

制度によっては、交付申請の前に工事内容をまとめた提案書を提出し、自治体と調整する段階があります。

必要な書類や手続きの順序は、防災対策工事と減災対策工事でも異なるため、上の流れだけを見て自己判断で進めないようにしましょう。

年度内に完了報告書を提出する期限も設定されています。

工事規模が大きい場合は、申請期限だけでなく、設計・審査・施工・完了報告に必要な期間を逆算して動くことが大切です。

受付期間と工事完了期限を確認する

補助金・助成金は、制度が存在していても1年中いつでも申請できるとは限りません。

期限

2026年度の防災・減災対策工事助成金は、2026年4月13日から受付を開始し、交付申請期限は2026年12月28日までを予定しています。

さらに、交付決定を受けた年度の2月末までに完了報告書を提出する必要があります。

申請期限の直前に相談しても、調査や設計、見積もりの作成が間に合わない可能性があります。

次のような状況では、特に早めの相談が必要です。

  • 高い擁壁で工事範囲が広い
  • 既存擁壁の図面が残っていない
  • 土地の所有者が複数いる
  • 隣地へ入らなければ施工できない
  • 道路使用など別の手続きが必要になる
  • 工事車両が入りにくい
  • 建物や車庫が擁壁に近接している
  • 雨の多い時期には施工しにくい
  • 自治体との工法調整が必要になる

工事の緊急性が高い場合は、補助金の受付時期を待つことが適切とは限りません。
大きな傾きや土砂の流出などがあり、道路や隣地へ影響するおそれがある場合は、安全の確保を優先し、自治体へ速やかに相談しましょう。

一方で、制度を利用するために必要な手続きを無視して工事を進めれば、助成を受けられなくなる可能性があります。

安全性と申請手続きの両方について、自治体の指示を確認しながら進める必要があります。

よくある疑問に応えます!

擁壁の補助制度は自治体ごとに内容が異なるため、インターネット上で見つけた別の市町村の事例を、そのまま自宅へ当てはめることはできません。

また、「古い擁壁」「ひび割れ」「高さ2m」といった1つの条件だけで、対象かどうかを判断することも困難です。

ここでは、擁壁の補修と補助金について生じやすい疑問を紹介し、回答します。
最終的な利用可否は、土地がある自治体へ確認してください。

小さなひび割れでも補助金を利用できますか?

ひび割れがあるという理由だけで、補助対象になるとは限りません。
表面の美観を整えるだけの補修では、制度の対象にならない可能性があります。

一方で、ひび割れが擁壁全体の動きや排水不良と関係し、補強や地下水排除などの防災・減災工事が必要と判断されれば、対象になる場合があります。

ひび割れの幅だけで判断せず、擁壁全体と周辺地盤の状態を確認しましょう。

自分で補修した場合も補助金を受け取れますか?

自治体が指定する手続きや工事条件を満たさず、自分で行った補修に対して、後から助成金を受け取ることは難しいと考えられます。

横浜市では、交付決定前の契約・着工を認めておらず、市内に本社がある事業者と工事契約を結ぶことも条件としています。

DIYで表面を補修したことで、擁壁内部の変化が分かりにくくなる可能性もあります。
気になる異変がある場合は、先に自治体や専門家へ相談しましょう。

工事が終わったあとでも申請できますか?

崖地防災・減災対策工事助成金制度では、交付決定前に工事契約または着工している場合、制度を利用できません。

したがって、工事完了後に領収書や写真を提出して助成を受ける制度ではありません。
擁壁工事を検討し始めた段階で相談し、交付決定を受けてから契約・着工する必要があります。
緊急性が高い場合は、安全対策と申請の扱いについて自治体へ直ちに確認してください。

補助金を使えば工事費用の負担はなくなりますか?

助成制度は、通常、工事費の全額を負担するものではありません。
対象工事費に一定の割合を掛けた金額、工法別単価による金額、制度上の限度額を比較して助成額が決まります。

助成対象外の工事や、上限を超える費用は自己負担です。

補助金を利用できるかだけでなく、工事後に必要な外構の復旧費や将来の維持費も含めて予算を考えましょう。

まとめ:擁壁の補修と補助金は工事契約前の相談が重要

擁壁の補修に利用できる補助金・助成金はありますが、すべてのひび割れや工事が対象になるわけではありません。

対象になるかどうかは、擁壁や崖地の状態、周囲への影響、必要な工法、土地の所有関係、申請時期などによって判断されます。また、制度の有無や助成条件は自治体ごとに異なります。

特に注意したいのは、相談、申請、交付決定、契約、着工の順番です。多くの制度では、交付決定前に契約や着工をすると助成を受けられないため、工事を依頼する前に自治体へ相談しましょう。

補助金は、助成額の大きな工法を選ぶための制度ではありません。擁壁の状態を調べ、その土地に必要な補修・補強方法を確認したうえで、利用できる制度を探すことが大切です。

擁壁に気になる変化を見つけたら、表面だけを急いで補修せず、自治体と擁壁に詳しい専門家へ相談することから始めてください。

擁壁の状態や土地の高低差を含めた家づくりについては、あすなろ建築工房のお問い合わせページからご相談いただけます。

あすなろスタッフ

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