中古マンションリノベーションのメリットは?後悔しないために
土地や建材価格の高騰が続く中、「新築は厳しいが、自分たちらしい暮らしは叶えたい」という方に支持されているのが「中古マンションリノベーション」です。
実は、新築にはないメリットや、費用面・立地面の柔軟性を活かせるのが魅力ですが、物件選びに失敗すると、理想の暮らしは実現しにくくなってしまいます。
本記事では、マンションリノベのメリットと、その魅力を最大化できる選び方について、建築のプロが解説します。
中古マンションと新築マンションの違いとは?リノベーションするのにメリットある?

中古マンションをリノベーションするか、それとも新築マンションを購入するか――。
家探しを始めた方なら、誰しもが一度は悩むこの選択肢。価格・立地・自由度など、それぞれにメリット・デメリットがあります。
まず、購入前に知っておきたい「9つの比較項目」を見てみてください。
あなたの暮らし方や価値観に合った選択ができるよう、まずは全体像を把握してみましょう。
項目 | 中古マンションリノベ | 新築マンション |
---|---|---|
価格 | ◎ 割安で予算に合わせやすい | △ 建材・人件費高騰で高価格帯が多い |
立地 | ◎ 駅近・都市部など選択肢が多い | △ 希少なため選べる場所が限られる |
デザイン自由度 | ○ 構造制約があるがある程度自由 | △ 間取り・仕様は固定のことが多い |
管理体制 | △ 物件ごとに差がある | ◎ 基本的に最新の管理システムあり |
設備の新しさ | △ リノベで刷新可能だが築年数は古い | ◎ 最新設備が整っている |
修繕積立金 | △ 初期は安いが後々増える場合も | ○ 適正に設定されていることが多い |
資産価値 | △ 周辺環境や築年で変動あり | ◎ 新しいほど評価されやすい |
カスタマイズ性 | ◎ 内装を自分好みに変更できる | × カスタマイズは基本的に不可 |
入居タイミング | △ リノベ工事のため少し時間が必要 | ◎ 購入後すぐに入居可能 |
このように、中古マンションと新築マンションは、「どちらが優れている」というよりも「どちらが自分に合っているか」で選ぶのが正解です。
たとえば、「駅チカの便利な場所に住みたい」「自分好みに内装をアレンジしたい」という方には、中古マンションのリノベーションが向いているかもしれません。
一方で、「最新設備の整った家にすぐ住みたい」「管理体制が整った物件が安心」という方には、新築マンションの方が満足度が高いでしょう。
それぞれの違いを正しく理解したうえで、譲れないポイントに優先順位をつけて検討することが大切です。
マンションリノベーションのメリットは?最大限活かすための選び方12選

リノベーション前提で中古マンションを購入する場合ですが、マンションのポテンシャル次第で、リノベーションで必要となる費用も大きく変わってきます。
ポイントは以下の12点になります。
①築年数
②過去の大規模修繕の履歴
③設計会社
④施工会社
⑤スラブの厚さ
⑥排水配管がスラブ上か下か
⑦現状の床が二重床
⑧排気はトイレと洗面が別系統
⑨駐車場
⑩宅配ボックス
⑪土地の価格と規模が適正か
⑫浸水地域でない
ひとつずつ解説していきますね。
①築年数
マンションは築年数が15年~25年で、新耐震基準以降の1980年以降の設計のマンションを選びましょう。
1980年は、新耐震基準が大きく耐震基準が変わった年です。戸建ての場合には、浸透するまでに10年がかかったので「1990年以降」としていますが、マンションの場合は確認申請でしっかりチェックされており、1980年以降であればよいでしょう。
築年数が30年を超えると、給排水管の老朽化が問題となり始めるため、現実的には築15年~25年程度の物件が価格の下がり方もよく、条件が良いものが多いように感じます。
②過去の大規模修繕の履歴
過去の大規模修繕の履歴があるかはとても大事な判断材料となります。
管理会社がしっかりとしていて、修繕積立金がしっかりと積み上げられていて、予定通りに大規模修繕がなされているかを確認します。
マンションの規模の割に修繕積立金が少なくないか、不用意に大規模修繕が延期されていないか、を確認します。修繕積立金が適正かどうかは、ネットでググるといろいろ出てきますので、それらを参考にされるとよいと思います。
マンションの修繕積立金に関するガイドラインを載せておきますね。
③設計会社
設計会社はとても大事なチェックポイントで、設計と施工は分離されている方が望ましいです。
設計会社がしっかり現場を監理出来ているかどうかで、性能も大きく変わってきます。
マンションの元々の販売価格にも大きく関わってくる部分で、良い設計者と良い施工者が建てたマンションはある意味でブランドが確立されており、販売時もそれなりの価格がしていた物件です。
築年数が経ち、価格がこなれてきている物件もあるので、販売時の価格を比較してみることもよいと思います。築20年~30年になれば、価格がこなれている物件も見受けられますので、視野に入れて探してみるのもよいでしょう。
④施工会社
施工会社もかなりの差があり、大手ゼネコンであれば安心です。聞いたことがないような施工会社の場合には、すでに倒産してしまっているところも多いので要注意です。
施工会社がメンテナンスをしていたりしている場合も多いので、施工会社はほんとに大事なチェックポイントとなると思います。
⑤スラブの厚さ
マンションなど鉄筋コンクリート造(RC造)の場合、住戸間の音を遮るためにはコンクリートの厚みが必要となります。「音は質量で取る」と言うように、重量が多くあればあるほど、隣の音を遮ることができます。
特にマンションの場合は上下間の音が問題となりますので、スラブの厚さが大事となってきます。
築年数が30年以上の場合、まだまだ音の問題が重要視されていなかったこともあり、スラブ厚さが180mm以下の場合も多く見受けられます。最近は250mmとか300mmというマンションも増えて来ていますが、最低でも200mmはある物件をお勧めします。
⑥排水配管がスラブ上か下か
マンションの場合「床下」と呼ばれる部分がありませんので、基本的にはスラブ上配管となります。しかし築年数が古い住戸の場合、スラブ下配管となっている場合があります。
スラブ下の配管の場合は、下のお部屋の方の天井裏となりますので、こちらの都合で配管を入れ替えることはできず、排水音の問題も顕著に発生します。排水は「スラブ上」が必須と思っていただいた方が良いでしょう。
そこで問題となるのがスラブの高さとなります。
マンションとしてコンクリートの床スラブは段差なく同じ高さで一定になっているほうが建設コストは安くできるため、住宅設備で排水があるところとない所で床の高さに段差が生じます。
高級なマンションの場合には段差を解消するために、水回りと呼ばれる「洗面所」「浴室」「トイレ」「キッチン」のある場所の床を150mmほど下げてあります。
そういった点も見ていただくとさらに良いマンションを選べますね。
⑦現状の床が二重床かどうか
マンションの場合、「二重床」仕様であるかどうかで大きくグレードが変わり、「二重床」が理想です。
「二重床」とはコンクリートスラブに支持ボルトと呼ばれる束材を立て、その上に床の下地板を敷き並べ、その上にフローリング材やカーペットなどの仕上げをする構造です。
2000年に住宅品質確保促進法(品確法)によって、住戸間の音が仕様として定められたため、それ以降の住宅では二重床仕様にして上下住戸間の音を遮蔽してる物件がほとんどです。
2000年以前の住宅の場合は、コンクリートの床のスラブの上に直接床を仕上げる「直貼り」と呼ばれる仕様で床が仕上げられている場合が多くなります。床の冷たさや硬さを解消するために、この時代のマンションの場合は、柔らかい感触のフローリングやカーペットで仕上げられており、基本的には無垢のフローリングは使えません。
無垢のフローリングを希望するのであれば、二重床仕様にして10cm前後床を上げる必要がありますが、床スラブと天井の梁の距離が1800mmしかなければ、床を10cm上げると梁の下の高さが1700mmで、頭が当たってしまいます。
直貼り仕様のマンションの場合には、梁下の高さが2100mmくらいは現状で確保されていないと、無垢フローリングには変更できないという条件が付くため、要注意です。
⑧排気はトイレと洗面が別系統
マンションの場合、浴室と洗面とトイレの排気を同一系統でつないでいる場合が多く、浴室と洗面とトイレを同時に排気しています。
浴室に入る前に換気扇を止めておいても、家族の誰かがトイレに入ると排気されてしまって、浴室も排気されてしまいます。
マンションの場合は後から外壁に穴を開けて排気経路を増やすことはできません。
浴室と洗面とトイレが同一系統となっている場合には、リノベーション後も同じ排気系統となるため、注意が必要です。
⑨駐車場
機械式立体駐車場がある場合、定期的なメンテナンスや修繕が必要となり、管理費や使用料が高くなる場合があります。
駐車場利用者でこの費用を賄っている場合は、駐車場料金が跳ね上がる可能性があり、更新する際にはかなりの費用がかかります。機械式立体駐車場を使わなくなり、大きなお荷物を抱える状態のマンションも実際に多くあります。
理想は機械式立体駐車場でなく、地上の平面駐車場だけで駐車場が確保されているマンションが望ましいです。
⑩宅配ボックス
宅配ボックスのニーズは最近のもので、amazonなどの通信販売がメジャーになってからのものです。
新築時から宅配ボックスがある場合、居住者からの要望で後付けされている場合は問題ありません。
現時点で宅配ボックスが設置されていないマンションは、共用玄関部分つまりエントランスに設置スペースがないため、宅配サービスは利用できないということになります。留守中はコンビニや駅で受け取りするしかありません。
日々の生活を考えると、意外に重要なポイントと言えるでしょう。
⑪土地の価格と規模が適正
実は一番に気にして欲しい項目です。最近は地方都市などで、必要以上に高密度で高価格のマンションが建てられています。
本来であれば、そこまでの高密度のマンションを建てるべきではないところに、容積率目一杯で、機械式駐車場にして、高密度なマンションを建てているのです。
都心部で土地価格が高いところはそのような高密度なマンションもよいのですが、特に土地価格が高くはないエリアで高密度なマンションが最近たくさん建ってしまっています。マンションの耐用年数が過ぎた時に、マンション自体の解体の費用を土地代でカバーできるのでしょうか。
将来的にも需要がある土地であればいいですが、そうでない場合は最終的な所有者で解体費を負担しなくてはならなくなります。土地価格-解体費がマイナスとなる場合は、マイナスとなった分を所有者で案分して用意しなくてはならないということです。
これは調べることは簡単では無いですが、ネット情報で周辺の土地価格などを調べていくと見当がついてきます。
そんなリスクも考えて購入して頂きたいと思います。
⑫浸水地域でない
ハザードマップ上で、マンションの立地が浸水地域になっているかどうかはとても大事です。
マンションの規模にも寄りますが、地下部分に給水ポンプや変電施設が設置されているマンションも多くあります。
集中豪雨が増えており、最近建てられたマンションは、災害時対応も考えて設計されていますが、10年以上前に建てられているマンションの場合には、この部分の検討がしっかりなされていないマンションも多くあります。
災害が多くなっているため、こういった点も重視するとよいでしょう。
以上がマンション探しの際のチェックポイントとなります。
「管理体制のチェックポイント」と「お部屋ごとのチェックポイント」も簡単にまとめておきますね。
資産価値を守る「管理の質」もリノベの重要メリット
マンションの管理体制をチェック
マンションの管理体制をチェックするには、以下のポイントが重要です。
□管理会社はどこか? □管理体制はしっかりしているか □管理費は15000円以上かかっているか □修繕積立金はしっかりしているか □オートロック管理か □敷地内は監視カメラで監視されているか □ペット飼育の規約はあるか □エレベーターはきれいか □階段はきれいか □駐輪場は管理されているか □バイクの駐輪に問題はないか □敷地内に違法駐車、駐輪はないか □ゴミ置き場は管理されているか □外構は掃除されているか □植栽は管理(剪定)されているか □共用部は管理されているか(利用できるのか) □共用施設の内容確認(ロビー、図書室、フィットネスジム、プール、ゲストルーム、ランチルームなど) □過去にマンションリフォームの経験があるか(築年数が新しい場合に注意) □ゲスト用の駐車場はあるか □掲示板は管理された掲示がなされているか □設計図書(竣工図)は管理組合または管理事務所で管理できているか |
部屋のチェックポイント
マンションの部屋を選ぶ際のポイントは以下のようになります。
□過去のリノベの履歴 □角部屋 最上階 1階(断熱の範囲) □リビングの方位 □ポーチの有無 □トランクルームの有無 □日当たり □給湯器の位置(ベランダ、廊下、室内) □共用廊下との関係 □ルーフバルコニーの有無 □地下室の有無 □窓からの眺め □ベランダから見た近隣ベランダの様子 □外から見た部屋周辺のベランダや玄関周りの様子 □北側の部屋のカビの状況 □窓周りのカビの状況 □両隣の庭の状況(1階庭付き住戸の場合) □利用エレベーターの台数 |
あまりに長くなってしまうため、管理体制のチェックポイント、部屋選びのチェックポイントの解説は別の機会にさせていただきますね。
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