家づくり

応急仮設住宅の種類やメリットを解説「いつか来る大規模災害のために」

1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、被害を受けた皆様に心よりお見舞い申し上げます。

私たちの事務所がある横浜では、首都圏直下型の大地震が起こる確率が、30年以内に70%とされており、被災する可能性が高いと言えるでしょう。もし大災害に見舞われたとき、応急仮設住宅について知っておくと、いざというときに慌てないで済みます。

応急仮設住宅の種類や、木造での仮設住宅のメリットを解説します。

応急仮設住宅とは

応急仮設住宅が災害時に利用されることは知っていても、実は応急仮設住宅についてよく分からない方も多いのではないでしょうか。応急仮設住宅について知っておくと、いざというときに慌てないで済みます。

大きな地震や台風の場合、家が被災してしまうことは避けられません。全壊すれば住み続けられず、半壊や中破の場合にも修理が必要です。

被災直後は小学校の体育館や公民館など指定避難場所で避難し、その後応急仮設住宅への入居が促されます。応急仮設住宅とは、災害救助法に基づき県や市が応急仮設住宅を建設して、提供する制度です。

対象は、災害により住宅が全壊や半壊などの被害を受けて、自分の資力で補修したり、建て替えたりできない被災者です。過去の震災などでは、被災した人全員が応急仮設住宅に入るわけではなく、8割近くの人は自力で仮住まいを確保しています。

被災した自宅を応急修理し住む方、賃貸住宅を契約する方、公営住宅を契約する方、親せきのお宅や別荘を仮住まいにする方など、さまざまなパターンが存在します。

2割の方は自力での仮住まいが確保できず、行政が準備した応急仮設住宅に入居することになります。

応急仮設住宅の種類は2つ

応急仮設住宅には「賃貸型」「建設型」の2つの種類があります。

「賃貸型」とは民間の賃貸住宅を県や市が借り上げ、それを応急仮設住宅として行政が提供するものです。近年の大型台風での災害の際は、賃貸型が多いです。

「建設型」とは、新しく建設して提供される仮設住宅を言います。東日本大震災の際に多くの仮設住宅が建設されましたが、その後の災害ではごく一部の建設に限られています。

令和元年の台風の際は関東甲信越地域に大きな被害をもたらしましたが、建築型の仮設住宅が建てられたのは長野県だけです。被災の規模が小さければ「賃貸型」、賃貸型で賄えない場合に「建設型」が提供されることになります。

この「建設型」にも大きく二つの種類があり、ハウスメーカー主導での「プレハブタイプ」と工務店主導の「木造タイプ」です。

東日本大震災以前は、「プレハブタイプ」がほとんどでした。工務店に仮設住宅建設を依頼することはなく、プレハブハウス協会という業界団体と協定を結び、建設されていました。

しかし東日本大震災の際に、プレハブタイプだけでは供給数がまかなえず、木造タイプを手掛ける工務店団体に依頼した経緯があります。当社でも2週間にわたり、仮設住宅の建築のお手伝いをさせていただきました。

プレハブタイプというのはこのような建物で、皆さんのイメージする仮設住宅はプレハブタイプではないでしょうか

プレハブの現場の仮設事務所と同じつくり方です。

木造タイプの仮設住宅は私たちが手掛けるもので、このようにできあがります。

画像出典:全国木造建設事業協会

耐震等級や断熱等級などは基準法で定める最低基準ですが、普段当社が建てている家と同じように建てているため、住まい心地はプレハブとは雲泥の差といえるでしょう。

木造の仮設住宅のメリット

木造による仮設住宅のメリットは4つあります。

  • 地域での地元産材の振興ができる
  • 地元工務店の雇用増が望める
  • 再利用も可能である
  • 住み心地がプレハブより良い

応急仮設住宅としての役目を終えた材を使って、市営住宅に転用した事例もあります。被災者入居者からの評判がよく、東日本大震災以降は木造の応急仮設住宅の注目が大きくなっているのです。

東日本大震災以前は政治的な関係でプレハブタイプの応急仮設住宅しか建てられませんでしたが、その後一般社団法人 全国木造建設事業協会が立ち上がり、全国規模で広がりました。

有事の際には、木造仮設を提供する災害協定がなければ木造の仮設住宅は建てられないため、神奈川県とも全木協神奈川県協会は協定も結んでいます。

まとめ・災害発生時のために地方工務店ができること

災害発生時には、我々地域工務店が応急仮設住宅を建設することになるので、普段から備えるために、定期的に訓練を行っています。

全木協神奈川県協会主催で開催された「応急仮設住宅」展示の説明員をすることもあります。応急仮設住宅を知ってもらうため、イベントでは次のような内容の展示や説明をしています。

  1. 木造応急仮設の実物大の展示
  2. 団地ジオラマ模型の展示
  3. パネル展示
  4. 子供向け「マイ箸つくり」
  5. 応急仮設の入居方法について

地域の工務店は新築を建てたり、リフォーム工事をしたり、メンテナンスなどの家守りをするだけでなく、いつかくる有事の際のための訓練や広報活動も行っています。こんな裏の活動も知っておいていただければ幸いです。


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