リノベーション
粋継(すいけい)の家
昭和初期の粋な趣を、次の90年へ受け継ぐ性能向上リノベーション
3年前に完成した「U-project」の離れとなる、築90年のお住まいのリノベーションプロジェクトです。
粋継(すいけい)の家
物件種別:一戸建て(離れ)
築年数:築90年
構造・工法:木造(石場立てからべた基礎へ改修)
性能向上:耐震等級1確保 / 断熱等級5クリア
主な工期:約1年以上

戦中は外国人が暮らし、戦後は数寄屋を愛する粋狂な借主によって独自の増築やアレンジが施されてきた、豊かな歴史を持つ建物。
しかし、近年行われた現代風のリフォームによって、本来の趣が薄れてしまっていました。
今回の計画では、断熱・耐震性能に大きな課題を抱えていた古い家屋に新たな生命力を注ぎ込み、戦後の粋な雰囲気を現代に蘇らせながら、次世代へと住み継ぐことができる確かな性能(耐震等級1・断熱等級5)へと向上させることを目指しました。
point
1. 趣ある佇まい(ファサード)の保存と断熱の両立
南側の外観(ファサード)にはなんとも言えない美しい趣があったため、この表情を壊さずに性能を確保する設計を試みました。
南面の味わい深い木製建具はそのまま残し、その内側に新たな断熱ラインを設定。
室内側に断熱内窓を設けることで、外観の美しさと現代の快適な住環境を両立させています。


2. 構造の抜本的な見直しと耐震補強
解体して初めて分かる「開けたらびっくり」が多い難現場であり、土台から見直す大がかりな工事となりました。
かつて石場立てだった基礎には、新たにしっかりとべた基礎を設け、土台からやり直しています。
過去の改修によって抜かれてしまっていた柱の位置を元に戻し、梁を補強。
さらに、壁の耐力確保や、2階・屋根の下地の葺き直しを行うことで、平面剛性を大幅に向上させ、耐震等級1を確保しました。
6センチあった傾きを直した熟練大工の技は誇れるものです。

3. 歴史を継承する玄関とディテール
建物の顔となる玄関には、元々使われていた趣のあるガラスの引き違い戸をそのまま再利用。
防犯(セキュリティ)と断熱の課題を解決するため、玄関から一歩入った部屋の位置繰り部分に新たに鍵付きの断熱ドアを設置し、デザインと機能を分離させる工夫を施しました。


また、かつてカーペットが敷かれていた階段は元の木肌が美しい姿へと戻し、階段脇に施されていた職人の手による装飾もそのまま大切に残しています。



4. 現代の暮らしに寄り添う間取りと造作
リビング・ダイニング
和室だった空間を心地よいリビングへ。造作キッチンを備えたダイニングとは、4本の引き戸で緩やかに仕切ることができます。



書斎
リビング奥にあった古い納戸は、現代のライフスタイルに合わせたおもり感のある書斎スペースへと生まれ変わりました。

2階の和室
元の美しい意匠を最大限に再現し、備え付けの造り机や床の間も美しく整えました。窓際の内縁(インナーテラス)は外部の木製窓を活かしつつ、4枚の樹脂製サッシを新設して「サンルーム」のような扱いに。断熱性とセキュリティを高めた特等席です。


水回り
キッチンや浴室(ユニットバス)、カウンター付きのトイレなど、暮らしの利便性を左右する水回りは現代的で使いやすい仕様に一新。
洗面台には実験用流しとスライド鏡を組み合わせた、シンプルで機能的な造作を施しています。


家づくりに携わった者たちの想い
昭和初期に建てられ、90年の時を経て一時は命が途絶えかけていたお家。
解体から補強、造作まで1年以上の歳月をかけ、じっくりと丁寧に向き合いました。
過去の住まい手たちが愛した「粋」な意匠や空気感を大切に受け継ぎながら、現代の厳しい安全・断熱基準を満たす住まいへと蘇ったこの家が、これから先もさらに90年、家族の歴史を紡ぎ、住み継がれていくことを願っています。

構造設計:山辺構造設計事務所
設計・施工:あすなろ建築工房













































