家づくり設計

「理想の間取り」を手に入れるために必要なこと

「家族にとって理想の間取りとは?」は「注文住宅で家を持とう」と思った方は必ずは考えることだと思います。

ではどうやれば『理想の間取り』を手に入れることが出来るのでしょう?

<『理想の間取り』は自分(素人)では描けない>

先にお話ししておかなければならないことがあります。「『理想の間取り』は自分(素人)では描けない」ということです。

時折「自分でプランを考えたので、このプランでお願いします」という方がいらっしゃいますが、その通りになることはまず無いのが実情です。ご本人的には「これ以上の間取りは考えられない。これが一番。」と思われているのですが、プロの目から見てみると、多くの問題が残ったままとなっている場合がほとんどです。「動線に無駄がある」「動線が交錯している」「採光が取れていない」「風通しが悪い」「収納が少ない(多すぎる)」「構造的に成り立っていない」「法的に成り立っていない」などなど、挙げると限がありません。

メンテナンス性を考える

実は『間取り』を考えるってとっても難しいことなんです。『間取り」を考える作業というものは、「そこに住まう家族のニーズと抱える問題点を整理し」、「計画する敷地の様々な条件をクリアさせ」、「予算と材料と施工技術などとのバランスを取って」、様々な条件をクリアし、『最適解』を導き出す作業となるからです。大学や専門学校で建築を学び、設計事務所で10年修行したとしても、それでも「住まいやすい間取り」を描ける人はほんのわずかと言えます。それくらい「無駄がなく、住まいやすい間取り」を描くことはとても難しいものです。

プランを描くためには、家族のニーズを汲み取るためのヒアリングを重ね、現在のお住まいにもお伺いするなどして、現在の家族の問題点を整理することから始まります。そして計画する敷地を訪れ、朝日の登る方向、夕日が沈む方向、近隣の目線、道路の交通状況を調査し、耳を研ぎ澄まし風や音を感じ、その敷地を肌で感じ、土地の特性(クセ)を把握することを行います。また地域の役所などにも伺い、その土地に対する法的な制限についても調べます。時には法務局にも足を運び、その土地の所有状況なども調べることもあります。繰り返しとなりますが、あらゆる諸条件を整理し、さまざまな制約の条件の下で、家族にとっての最適解を導き出す作業が「間取り」設計となります。

外と中の関係を考える

また「間取り」というと平面的なイメージを持たれる方も多いと思いますが、実は「間取り」といっても平面的なものではなく、しっかりと断面も検討されているものでなければ「よい間取り」にはなりません。設計のプロになるとプランを見ると断面的な空間が想像できるようになります。逆に言うと「断面的に考えられていないプランは『よい間取り』にはなっていない」ということです。

もし、建て主の要望を掘り下げて聞かなかったり、現在のお住まいを見なかったり、敷地に足を運ばなかったり、役所に調査しなかったりで、プランを描くような設計者が居るとすれば、それはそこに住まう家族のことをこれっぽっちも考えていないということであり、『理想の間取り』には程遠いものになると思います。

まとめると『理想の間取り』を手に入れるための条件は下記となります。

・家族のニーズを整理する

・家族の抱える問題(現状)を整理する

・敷地の条件(高低差、太陽、風、音、臭い、目線、電線、ゴミ置場、高低差など)を整理する

・法的な制約を整理する

以上の条件がそろって初めて、『理想の間取り』に近づくことが出来ます。

<ではどうしたら『理想の間取り』を得られるのか?>

「自分では『理想の間取り』は描けない」では、どうしたらよいのか?

「たくさんのモデルハウスを見て気に入ったプランを探す?」「市販されている間取り事例集から選んでみる?」では「理想の間取り」にはなりませんね。敷地も違うし、住まう人が違うのに同じ間取りが、「理想的な間取り」であるはずがありません。

先にお話ししたように「自分で」間取りを描くことはとっても難しいものです。

著名な建築家も「自宅」となると、なかなか上手にプランが描けずに、何年もかかってしまうと言われています。それほど、自分で理想の間取りを考えるのは難しいことなんです。優れた設計者にニーズを伝え、条件を整理してもらって、間取りを提案してもらう方が確実です。

要は「この人なら、任せられる!」と思える設計者を見つけるということが、『理想の間取り』を手に入れるための最良で唯一の方法と言えると思います。

是非「任せられる設計者」を見つけて頂きたいと思います。

<「間取り」を勉強するために必要な知識>

それでも「自分で『間取り』について勉強したい」という方には、下記の書籍をご覧いただくのがよいと思います。

①『家を建てたくなったら』丹羽修著 WAVE出版

丹羽さんは、先日も見学会に参加させていただいたのですが、お客様の要望を適えたとても住まい心地のよい家を設計される建築家の方です。「どんな暮らしがしたいのか」「一応をやめる」「愛着のある家が長持ちする家」など、普段私がお客様にご説明していることが書かれています。具体的な間取りの紹介本ではありませんが、理想の間取りを手に入れるための秘訣が書かれています。題名の通り、「家を建てたくなった」そんな方に是非読んで頂きたい一冊です。

②『間取りの方程式』飯塚豊著 エクスナレッジ社

飯塚さんは、これまでも見学会も多く拝見させて頂いており、内輪の中までの勉強会に講師にも来ていただいたりしています。飯塚さんが長年の経験と高い論理性でまとめられた住宅設計のノウハウ本です。家族のニーズや敷地条件などの諸条件ごとに、ケーススタディ方式でその解決策が紹介されています。敷地の配置計画から、諸室の配置、収納の考え方まで、理論に沿って分かりやすく説明されています。内容的にはかなり専門的なので、建て主よりも設計者にとっての教科書的な書籍とも言えます。一歩踏み込んで間取りを考えたい人にお勧めです。

③『小さな家の間取り解剖図鑑』本間至著 エクスナレッジ社

本間さんは、それはそれは有名な住宅作家の方です。これまでも著書を拝見し、見学会にもお伺いし、たくさん勉強させて頂きました。この本には、都市部の狭小地でのプランがたくさん載っています。参考になるプランもきっとあると思います。この本も飯塚さんの著書と同様に、建て主よりも設計者にとっての教科書的な意味合いが強いかもしれません。「小さな家の『間取り』10の原理原則」という内容は、どんな家にも当てはまるものです。何かヒントが必ず得られる書籍と思います。

④『伊礼智の「小さな家」70のレシピ』伊礼智著 エクスナレッジ社

言わずも知れた住宅作家の伊礼智さんの代表著書です。70のレシピ(キーワード)ごとに小さな家の考え方が示され、間取りも多く載っています。伊礼さんの住宅の居心地の良さを間取りから知りたい人には欠かせない一冊です。

⑤『荻野寿也の「美し住まいの緑」85のレシピ』荻野寿也著 エクスナレッジ社

荻野さんは、住宅業界では有名な造園家の方です。造園工事を荻野さん指名する建築家が数多くいます。「生活を営む内部空間と外部空間をいかにして結ぶか」をテーマに仕事をされており、建物の計画段階から参画し、プランニング(間取り)にも要望を出されることも多いと聞きます。そんな荻野さんが手がけられた庭のある住宅の間取りが数多く紹介されています。理想の間取りと「緑」は切り離せないと思います。家と庭(外部)との関係を考えた間取りを得たい人は、読んでおきたい一冊です。

せっかくなので、あすなろ建築工房で設計した住宅の間取りが紹介されている書籍もご紹介しておきます。

(1)『住宅デザインの手帖 (建築知識の本 09) 』 エクスナレッジ社

過去に建築知識の紙面にて紹介された物件の中から、50軒ほど選り抜かれた物件が掲載されています。その内の7軒(「床座の家」「六ッ川の家」「つなぐ家」「家事ラクの家」「Inner Box」「追憶の家」「積層の家」が紹介されました。)があすなろ建築工房の設計施工の住宅です。

(2)『建築知識2019年1月号「間取りのすごい新常識」』 エクスナレッジ社

「動線」、「断面」、「収納」の切り口で多くの間取りが解説されています。あすなろ建築工房からは「ハナミヅキハウス」「ベリーズハウス」「Bench house」の間取りが掲載されています。

(3)『建築知識ビルダーズ38(プロセスから学ぶ スーパー工務店の一発OK 間取り術)』 エクスナレッジ社

あすなろ建築工房が行っている普段の設計のプロセスをご紹介させていただき、「間取り」がどうやって描かれているかについて紹介されています。実際の事例「フルハウス(田園調布本町の家)」の詳しい図面や写真も多く14ページに渡って掲載されています。

(4)『建築知識ビルダーズ 27号(成功する間取りの法則)』 エクスナレッジ社

『小さい家の間取りの法則』の題で、あすなろ建築工房のモデルハウス「六ッ川の家」を事例として、あすなろ建築工房の考える設計手法を14のルールに分けて説明しています。図面や写真も多く掲載されています。

(5)『建築知識ビルダーズ 19号(プロが唸る 小さな家の間取り)』 エクスナレッジ社

「超狭小地を克服する合理的プランニング」の第で、「POP HOUSE(渋谷の家)」を事例として、7つのテクニックとして、図面や写真を用いて説明しています。家具の図面も分かりやすく紹介されています。

(6)『日経ホームビルダー11月号「がっかり間取りをつくらない!」』 日経BP社

あすなろ建築工房の設計手法について紹介されています。クライアントの要望を漏らさない方法としてマインドマップによる要望の可視化について紹介しています。理想の間取りの描き方の紹介と言えると思います。実際に新築工事の基本設計案作成の際に行っている方法です。定期購読本のため、アマゾンなどでは手に入らない雑誌ですが、日経xTECH(クロステック)というウェブマガジンで記事が紹介されています。
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/hb/18/00039/101600002/

<最後に>

以上、『理想の間取り』を手に入れるための方法?についてお話させていただきましたが、ご理解頂けましたでしょうか。

実際にあすなろ建築工房で「間取り」を描く場合に行っている手法については、上記書籍の(3)『建築知識ビルダーズ38(プロセスから学ぶ スーパー工務店の一発OK 間取り術)』 と(6)『日経ホームビルダー11月号「がっかり間取りをつくらない!」』 で紹介されています。「え~、本を買わないといけないの~?」と言われてしまうと思いますので、ここで紹介された「間取り」設計手法については、また別のコラムにて後日ご紹介したいと思います。

「間取り」設計ってとっても奥が深いのです。だからこそ住宅設計は楽しいのですけどね。


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