2018年10月25日 設計

4号建築物は設計図書保管の義務がない?

 

ご近所で12年前に建売住宅を購入した方から間取り変更のリフォームの依頼を受けました。間仕切りを移動させるので設計図書を見せてもらったのですが、確認申請図があるだけでした。建売業者からは他に図面などは渡されていないとのこと。幸い建売業者はつぶれておらず、まだ元気に営業中でしたので、「構造伏図を取り寄せたい」と依頼してもらいました。しかし業者からの回答は「保存期間を過ぎているので廃棄処分している」とのことでした。

 

 そこで 「設計図書の保管期間」について法律上の扱いを調べてみました。平成19年の法改正前までは「業務に関する図書(基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書)」は5年間の保存義務が課せられており、平成19年に建築士法が改正され、5年間だった期間が15年と大きく延長されています。専門の弁護士さんに問い合わせしたところ、平成19年改正の施行日前5年以内に作成された図書が対象であり、改正省令の施行の際に現に保存しているものは、「当該作成した日から起算して十五年間保存しなければならない」という経過措置がとられており、改正によって保管期間は15年に延長されているとのことでした。

 

今回のお客様の家は、平成18年に竣工していますので、平成19年の法改正の時点で図面は保管されていなければならず、そこで15年間に延長されているので、13年目の今年はまだ保管されていないと法律違反になります。しかしここで、「4号建築物」の扱いが問題となりました。弁護士さんによると、いわゆる建築基準法6条1項4号建物については、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書について、法律上、保管義務が課せられていないということでした。

 

以下、弁護士さんから頂いた理由です。

第24条の4第2項は、「前項に定めるもののほか、建築士事務所の開設者は、国土交通省令で定めるところにより、その建築士事務所の業務に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。」と定めている。
ここでのポイントは、「国土交通省令で定めるところにより」、「国土交通省令で定めるもの」を保存しなければならないという点。ここで「国土交通省の定め」とは、建築士法施行規則21条4項がそれにあたる。

建築士法施行規則21条4項は、次のように定めている。
「法第二十四条の四第二項に規定する建築士事務所の業務に関する図書で国土交通省令で定めるものは、建築士事務所に属する建築士が建築士事務所の業務として作成した設計図書のうち次に掲げるもの又は工事監理報告書で、法第三条から第三条の三までの規定により建築士でなければ作成することができないものとする。
一 配置図、各階平面図、二面以上の立面図及び二面以上の断面図
二 当該設計が建築基準法第六条第一項第二号又は第三号に係るものであるときは、前号に掲げるもののほか、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書

 

つまり、建築士法施行規則21条4項2号では、いわゆる2号建物、3号建物だけが対象になっており、4号建物が除外されているということ。この規定により、いわゆる4号建物については、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図及び構造計算書について、保管義務が課せられいない、という結論。つまり、4号建物については、構造審査が省略されている上に、設計図書の保管義務までないということになります。

 

弁護士さんも「このような法規制だと、まともに設計図書を作成しなくても良い、と考える輩が出てきてもおかしくないし、実際にそういう輩が欠陥住宅を生み出しているのが実情」とのコメントをいただきました。

 

4号建物に関する規制の問題点いろいろあることが分かりました。



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